半坪ビオトープの日記

浄土ヶ浦海岸、大山神社、黒島

 

浄土ヶ浦海岸
布施集落の北側に浄土ヶ浦海岸がある。1kmに及ぶ複雑な海岸は島礁の数が多く、多島海岸風景は風光明媚な景勝地で知られる。

浄土ヶ浦海岸

浄土ヶ浦海岸は大きく4つの入江に分かれ、この一番左の入江は最もおとなしい白砂の海岸である。

ヤブツバキ
赤い椿は、ヤブツバキCamellia japonica)という常緑樹。日本原産で、東北地方以南の主に海岸沿いに自生している。国外では朝鮮半島南部と中国、台湾が知られる。高さは5〜10mになり、成長が遅い分、材は硬く緻密で細工物などに利用される。多くの園芸品種の母種でもあり、庭木にもよく植えられる。種子から取れる椿油は上質で、整髪用などに用いられる。

浄土ヶ浦海岸

二つ目の入江は険しい岩山で囲まれ、松の緑、海の青に彩られ、不思議な景観が楽しめる。この辺りは大昔、川の流路で、そこに火山の溶岩が流れ下り、その場で冷え固まった溶岩が固く、風雨の侵食に耐えて、尖った岩礁が残ったという。

浄土ヶ浦海岸
赤褐色の流紋岩安山岩、堆積岩が混在して複雑な地層を見せている。さらに右手(東)の崎山岬の崖には、約265万年前に噴出した厚さ10m程度の玄武岩溶岩が見られるという。しかし、土砂崩れによる通行止めが何箇所もあった。また、浄土ヶ浦の名は、一休宗純がこの地を訪れ、さながら極楽浄土のようだと謳ったことに因むという。

大山神社の鳥居
布施の集落から南西に細い林道を進むと、程なくして森の中の大山神社に着く。

大山神社の神木

二日前の4月第一日曜日に大山神社祭「布施の山祭り」が行われたばかり。山からカズラを伐り出す「帯裁ち」そのカズラを大山神社の神木に巻きつけ、山仕事の安全を祈る「帯締め」などから成る神事で、日本最古の山祭りといわれ、県指定の無形民俗文化財でもある。

神木の杉の巨木
神木の杉の巨木は、樹齢約800年といわれ、樹高45m、幹周7.1mである。

帯締め」の神事
帯締め」の神事は、カズラ(サルナシの蔦)を7回り半巻きつける。鳥居はあっても社殿はなく、山祭りが文献に初めて見られるのは江戸時代の寛文10年(1667)。布施の村が植林を始めたのは享保の時代(171636)といわれる。

二本のケヤキ
近くのケヤキは二本あり、樹高30m、幹周4.3mと、樹高32m、幹周4.5m。

黒島展望台
布施から県道47号線を南下すると、大久の手前で島後の東端、黒島埼辺りで黒島展望台に通りかかる。沖合に浮かぶ大久の黒島は、約350万年前に噴火した火山の火口であるが、島の形は火山らしい姿ではなく柱型の岩が並んだ様相を見せている。火口だった証拠は二つある。溶岩が冷える時にできる柱状節理が垂直に立つが、島の中央の右手に放射状に並ぶ場所があり、溶岩の噴出口とされるヒビの向きが一つ。もう一つは溶岩に含まれる他の岩石である。マントルゼノリス(マントル捕獲岩)と呼ばれる岩の比重が高く、火口近くでしか見られない大きさ(重さ)を示していることである。このゼノリスは地球内部を直接知ることができる貴重な資料で、隠岐諸島の成り立ちを探る鍵にもなる。

隠岐片麻岩
傍に展示されていた「隠岐片麻岩」は、約2億5000万年前にできた隠岐で最古の岩石で、岐阜県飛騨地方の飛騨片麻岩とともに、「日本列島の屋台骨」として重要視されてきた。隠岐では島前でも島後でも普通に見られるが、典型的な岩石は島後中心部にある銚子ダム周辺の崖で見られる。2000年代になってからのジルコンの年代学研究結果から、飛騨片麻岩も隠岐片麻岩も約2億5000万年前が最後の編成作用であるが原岩は違うことがわかった。隠岐の原岩には、①1918億年前の花崗岩や変成岩の岩体があり、②16億年前に土砂が集まってできた堆積岩があり、3億5000万年前〜2億5000年前の間に海底に溜まった土砂による堆積岩があることが考えられている。

クサイチゴ

こちらの白い花はクサイチゴ(Rubus hirsutus)という落葉小低木。高さはせいぜい数十cmしかなく、葉も草質でイメージとしては多年生草本に見える。岩手県以南の日本各地の山野に普通に生え、4〜5月に開花し、実は赤く熟し食べられる。

セイヨウタンポポ

長い間ユーラシア大陸と一体だった隠岐は、2600万年前頃、徐々に大陸から分離され、大陸と日本列島の間に日本海が誕生。約1000万年前まで隠岐の大部分は海底にあったが、600万年前の火山活動によって隆起し、陸地になった。その後氷河期の海面低下と温暖期による海面上昇で、隠岐島根半島と陸続きになったり離れたりを何度か繰り返す。現在のような姿になったのは、約1万年前のこととされる。つまり隠岐に生息する動植物は、1万年分の進化を遂げたものばかり。オキサンショウウオやオキホシミスジ(蝶)など絶滅危惧種などの隠岐固有種が豊富だが、その中で最も簡単に見られるのがオキタンポポ(Taraxacum maruyamanum)なのだが、こちらのタンポポセイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)である。近年、隠岐諸島セイヨウタンポポが侵入・繁殖し問題となっている。見分け方は花の裏側の萼(総苞外片)を見て反り返らずくっついているのがオキタンポポで、こちらの右の花のように反りかえっているものがセイヨウタンポポである。かなり、繁殖しているようだ。