半坪ビオトープの日記

賀茂那備神社、都万の舟小屋

冠島
菱浦港からレインボージェットに乗って島後の西郷港に向かう。左手には西ノ島の北端の岬の先に繋がる冠島が見える。

西郷岬
船は島後の南岸沿いを東に進み、西郷岬を左に急旋回する。左に見える崖上の西郷岬灯台は、隠岐の島の海の玄関口西郷港に入港する船舶の道標となる灯台で、大正時代に初点灯した白亜の教会を思わせる建物だ。溶岩台地の上には隠岐世界ジオパーク空港がある。灯台直下から右手の崩落した白っぽい崖下までは、約55万年前の噴火で半島の溶岩台地ができた際の噴火口の一つで、マグマ水蒸気爆発で形成された「爆裂火口」の西側半分の火口壁にあたる。隠岐群島とその周辺海域は、島の歴史と日本形成が垣間見える大地と謎の多い生態系が存在する貴重な島として、平成25 年(2013世界ジオパークに認定された。

賀茂那備神社の両部鳥居
島後の西半分を西廻りで大急ぎで見て回る。まずは西郷港から南西6kmの深い入江の奥の加茂集落にある、賀茂那備神社を訪ねる。昔は島後の表玄関として栄えた場所らしい。木製の両部鳥居の先に大きな随神門が建っていて、その先に社殿が垣間見える。鳥居の額束に彫られた神紋は、丸に二重葵である。式内社の賀茂那備神社に比定される古社で、京都上賀茂神社の分霊を祀った神社でもある。因みに、上賀茂神社の神紋は、2枚葉の賀茂葵である。

狛犬
石灯籠には花と狛犬の彫刻がある。その手前の狛犬は台座が妙に低くて見落としてしまいそうだ。

随神門
随神門の先に構える拝殿は真新しく見えるが、よく見ると屋根や扉などは新しいが柱など古い部材も使われているので、改修されたようだ。

賀茂那備神社の拝殿

寛保2年(1742)の『賀茂大明神伝記』によれば、孝謙天皇天平年間(729〜49)の創建。主祭神は別雷神で、素戔嗚尊と玉安姫を配祀する。玉安姫が加茂港より隠岐に入り、当地に造営し、長く給仕したとされる。素戔嗚尊は宇津宮という地にあった祠を合祀したものという。往古は賀茂を本郷とし、西田、岸浜、箕浦、蛸木を枝郷として、それぞれの氏神、切明社、厳島社、花生社、姫宮社を摂社としていたが、今はそれぞれが独立しているようだ。

賀茂那備神社の本殿
現在の本殿は、神社に残る棟札等から文政11年(1828)に造営されたものである。切妻造妻入で、正面に向拝と呼ばれる屋根と連結しない庇が取り付けられているなどの特徴から、「隠岐造り」といわれる隠岐独特の形式が見て取れる。屋根は元々茅葺だったが、明治21年(1888)に杉皮に、昭和25年(1950)に銅板に葺き替えられた。本殿もいくつか部材を交換しているが、ほとんど昔のままの雰囲気を保っている。

本殿の懸魚と妻飾り
隠岐造り」の本殿としては、玉若酢命神社、水若酢神社に次ぐ3番目に古いものであり、町の有形文化財に指定されている。破風を見ると蕪懸魚に鰭が付き、降り懸魚も比較的大きい。奥の妻飾りを見ると、中央の大瓶束の両脇の笈形がとりわけ大きく目立つ。

右から見た本殿
本殿を右から見ると屋根や勾欄は取り替えているように見えるが、残りはかなり古く、文政11年のものと考えられる。また、この地には「的の前」という伝説がある。昔、都を切り開き、鴨川のほとりに住んでいた別雷神は、次の行き先を決めるのに、葵の葉を結んだ矢を放った。その矢を追って、川を越え野を越え、ついに若狭の港から船で追い、島にたどり着いた。入江に近づくと、かたわらの断崖絶壁に紛れもなく葵の葉を結んだ矢が突き刺さっていた。島の名は隠岐だった。その湾に加茂の名を付け、別雷神は加茂を開発し、住みよい村を作った。今もその矢の刺さった岩を「的の前」と呼んでいるという。

都万の舟小屋群
加茂からさらに西に進むと、都万漁港に着く。ここに「都万の舟小屋群」がある。昔ながらの杉皮葺きの平屋建てで、約20棟が海岸線に一直線に並ぶ。「白砂青松百選」に選定された「屋那の松原」に隣接している。屋那の松原には、その昔、若狭国から訪れた八百比丘尼が、一晩で植えたという伝説が残る。

都万の舟小屋

現在の舟小屋は、民俗資料的価値の高いものを後世に残そうと、関係者が昭和62 年に再現されたものであるが、現在も利用されている。船を入れて置くよりも、漁具などの道具置き場としての役割が強いそうだ。このほか、都万村屋那、布施村卯敷にも舟小屋があるそうだ。

牛突きのモニュメント
舟小屋群への入口に「牛突き」のモニュメントがある。隠岐では闘牛が盛んで、地元では「牛突き」と呼んでいる。承久の乱隠岐に流された後鳥羽上皇を慰めようと牛を戦わせたのが始まりとも言われる。都万村で毎年9月1日に開催されている「八朔牛突き大会」は、都万村那久の深山に鎮座する壇鏡神社の祭礼・八朔祭りで奉納される伝統行事で、800年近い伝統を誇り、日本最古の歴史を持つ。

海を背に立つ祠

舟小屋群の近くの海辺に海を背に祠が立つ。神社の原型か、詳細は不明。

釜屋神社
舟小屋の手前に釜屋神社がある。主祭神菅原道真公とのこと。その他の詳細は不明。