半坪ビオトープの日記

天健金草神社、カタクリの里

天健金草神社、一の鳥居

都万の北の霊亀山の麓に天健金草(あまたけかなかや)神社という古社があり、一の鳥居の先には緩い石段が長く続く。

天健金草神社、二の鳥居
木造の二の鳥居のずっと先に見えるのは社殿ではなく、随神門である。

随神門
随身門には天健金草神社の由緒略記が掲げられていて、その先にはまだ石段が続く。

天健金草神社の社殿

石段を上り切り、ようやく社殿の前に辿り着く。左右の狛犬は出雲型で、左手の吽型の狛犬の前には、小さな狛犬がちょこんと座っている。すぐ後ろの石灯籠は新調されたばかりである。以前の古い灯籠は、文化7年(1810)の来待石の灯籠だったが、笠が欠けていたために取り替えられた。

天健金草神社の拝殿
赤茶色の瓦屋根の拝殿も新しい。天健金草神社は、延長5年(927)成立の延喜式神名帳に記載される古社である。伝説によると、神功皇后三韓出兵の時、暴風を避けた際に参拝したという。社伝によると、孝謙天皇天平勝宝7年(755)、八幡原に社殿を建立、あるいは八幡原にあった社殿を現在地の霊亀山に遷座したという。また、延喜6年(906)、隠岐国の坤方(西南)より猛風が吹き、天健金草神の託宣があった。「新羅の賊船が北海にあり、我、彼の賊を追退せんがため大風を吹かせた」その後、帆柱等が流れ着き、神威の大きさを知らしめた、という。さらに、元弘の乱隠岐へ廃流となっていた後醍醐天皇は、この神社に脱出祈願を行い、それが叶った後に正一位を贈ったという。

拝殿には出雲注連縄
拝殿には大きな出雲注連縄が奉納されていて、その背後に見える「天健金草神社」の扁額も新調されている。

八幡流造の本殿
本殿は元治元年(1863)の建築で、八幡流造の形式。平面プランは玉若酢命神社や水若酢神社とほぼ同じで、隠岐造三間社の成立と関係があると考えられている。主祭神である抓津媛(つまつひめ)命、大屋津媛命の神名は、「都万」や「大屋」など地名となっていて、古くは都万、那久、油井、津戸、蛸木の5ヶ村で造営する大きな神社だった。神代の昔、大屋津媛命は都万村の大屋久の海岸に上陸し、そこの洞窟に住んだという。抓津媛命は佐山の湧泉「幣(しで)の池」のほとりに居を構えたという。抓津媛命は、建速須佐之男命櫛名田比売命の子で、五十猛命と大屋津媛命の末妹神。この三神は、父神に連れられて紀ノ国に渡ったとされ、抓津媛命を祀る神社は和歌山県島根県に多い。他に配祀されている、誉田別尊息長足姫命玉依姫命塩土翁は八幡宮の祭神を合祀したもの、建御名方命諏訪神社の祭神を合祀したものである。本殿前にも出雲注連縄が奉納されている。

武内神社
本殿右脇に武内神社という境内社がある。祭神は武内宿禰で、眞人神、春日大神も合祀されているそうだ。

ヒガンマムシグサ
本殿裏手にテンナンショウ属の花を見つけた。隠岐神社の境内でも見かけたが、ミミガタテンナンショウ(Arisaema limbatum)よりも仏炎苞の口辺部が耳状に広がる幅が狭いので、やはり、ヒガンマムシグサArisaema undulatifolium/aequinoctiale)と思われる。

牛突き場
二の鳥居の手前右手(東)には柵で丸く囲まれたところがある。境内図で確認したら牛突き場とある。年一回の大会以外は使わないので、草が生えている。毎年の例祭は、以前は大規模なもので、玉若酢命神社御霊会風流のように神馬八頭を神社境内へ馳せ入れたり、流鏑馬なども行われていたという。

トキワイカリソウ
都万北西の山越えのトンネルの脇に「大津永カタクリの里」の看板を見つけ、林道に入る。道端で白いイカリソウ属の花を見つける。北陸から山陰地方に多いトキワイカリソウEpimedium sempervirens)という多年草である。高さ2060cmになる。葉は卵形または狭卵形で、先は尖る。花色は白色または紅紫色。花には距があるのだが、この花は花弁に重なって見分けづらい。

カタクリの里
林道をかなり進んで道端に駐車し、さらに歩いて「大津永カタクリの里」に着く。里というより深山の中である。あたり一面にカタクリの花が咲いている。

カタクリ
カタクリErythronium japonicum)は、日本原産といわれ、全国に広く分布するが、主に中部地方から北に多く、西日本には少ない。国外でも朝鮮半島、千島列島、サハリン、ロシア沿海州に分布する。カタクリは「春の妖精」(スプリング・エフェメラル)と呼ばれ、「儚い命」という意味で、地上に出ているのは葉と花でも2ヶ月足らずで、夏には葉を枯らし翌春まで休眠状態で過ごす。発芽から開花まで8〜9年ほどかかる。

カタクリ

カタクリは、昔は「堅香子(かたかご)」と呼ばれ、球根から片栗粉が作られていた。現在は保護のため、ジャガイモなどから澱粉を抽出している。若葉を山菜として食すには、花は酢の物、葉や茎はお浸しや和え物、生のまま天ぷら、炒め物にして食べられる。