半坪ビオトープの日記

李禹煥美術館

李禹煥美術館 、「関係項-点線面」
地中美術館から少し進むと北ゲートがあり、ここから南に海沿いの道がつつじ荘までシャトルバス専用道路が続くが、ベネッセアートサイト直島の私有地エリアである。北ゲート脇の駐輪場に自転車を置き、シャトルバス専用道路を歩き始める。坂を下っていくと右手に李禹煥美術館が見えてくる。現在ヨーロッパを中心に活動している国際的に評価の高いアーティスト・李禹煥(リウファン)と建築家・安藤忠雄のコラボレーションによる美術館である。正面から見えるのは高さ6m、長さ50mのコンクリート壁だけで、延べ床面積443m2の建物の全容は見えない。入り口は壁の左端にある。建物の前庭にあたる「柱の広場」には、オベリスクのような18.5mの柱が立つ。これは「関係項-点線面」(2010)の一部だが、このように自然石や鉄板を素材とする「関係項」のシリーズが点在している。これは自然と文明の対比が共生か、あるいは東洋と西洋の出会いか、と訪れたものを哲学的な思考に誘導する。

「関係項-対話」、「無限門」
海と山に囲まれた谷間に、ひっそりと位置するこの美術館は、自然と建物と作品とが呼応しながら、モノにあふれる社会の中で、われわれの原点を見つめ、静かに思索する時間を与えてくれる。右手の黒い鉄板とそれを挟む自然石二つの作品は、「関係項-対話」(2010)。左手奥に見える、海へのゲートのような半円形の「無限門」(2019)は、自然石に囲まれたステンレスの門。その間を通る道も長さ25m、幅3mのステンレス。地上から海へ、海側から地上へと誘うかなり大きな門だ。門によって境界を作ることは守る知恵であり、ときに対立を呼び愚かな戦いを引き起こしてきた。そんな思考を呼び起こすことを李禹煥は石と鉄板だけで仕掛けるのである。

大きなコンクリートの壁に小さな作品
半地下構造となる安藤忠雄設計の建物の中には、李禹煥70年代から現在に至るまでの絵画・彫刻が展示されており、安藤忠雄の建築と響きあい、空間に静謐さとダイナミズムを感じさせる。打ちっぱなしの大きなコンクリートの壁には小さな作品がある。残念ながら建物の中は撮影禁止であった。

瀬戸内の石
李禹煥が目指したのは洞窟のような美術館で、半開きの空が見え、胎内へ戻るような、お墓の中へ入っていくような空間であった。これに対し安藤は、李が着想した3つの箱型の展示空間を屋根を持たない三角形の広場でつなぐプランを提案した。李禹煥が作品に用いる素材の一つとして自然石が挙げられるが、李は作品が展示される地域で石を採取することを重視している。李禹煥美術館の作品に使われる石は瀬戸内の採石場を巡って集めたものである。

草間彌生の「南瓜」
李禹煥美術館と反対側に草間彌生小沢剛の作品が展示されているヴァレーギャラリーへ下る道があったが、時間の都合で省略し、北ゲートへ戻り、自転車でベネッセハウス周辺をぐるりと回り込んで、東側の東ゲートの駐輪場につき、ベネッセミュージアムに向かって歩き始めた。海岸には草間彌生の作品「南瓜」が展示されていた。右手奥に見えるのは、オカメの鼻とその手前に伸びる桟橋である。

2022年に復元制作された南瓜
「水玉の女王」とも称される草間彌生の作品の代表作の一つ「南瓜」は、各地にいくつも作られているが、これは2022年に復元制作された作品である。元は、1994年にベネッセハウスミュージアムで開催された「Open Air’94”Out of Bounds”-海景の中の現代美術展-」のために制作設置されたもの。草間にとって初めて野外での展示を念頭に作られた作品群の一つで、高さ2m、幅2.5m。それまでに制作された南瓜彫刻の中では最大級のものだった。2021年の台風9号により海に流され破損した「南瓜」(1994)が約1年後に復元されたのである。

ジョージ・リッキーの「三枚の正方形」
海岸沿いに歩いていくと、道はベネッセハウスミュージアムに向かって上がっていく。すると左手のシーサイドギャラリーへの分岐辺りに、3枚の金属板が立って並んでいる。オカメの鼻手前に点在する数点の屋外アートの一つで、ジョージ・リッキーの「三枚の正方形(Three Squares Vertical Diagonal)」。

オカメの鼻の岬
なおも道を上っていくと、左手下にオカメの鼻の岬がよく見える。