半坪ビオトープの日記

赤壁展望台

赤壁展望台より神島
赤禿山展望台から南に下って、知夫里島の西端にある赤壁という名勝を見に行く。駐車場から展望台へと遊歩道を北西方向に向かうのだが、振り返ると南東方向の海の向こうに小さな島が見える。神島という島で、知夫里島の一宮神社の神が最初に降り立った地と、島の伝説で伝えられている。

知夫赤壁
崖の上の放牧地の緑や崖下の青い海を背景に、赤と黒の岩肌のコントラストが印象的に見える赤壁は、隠岐諸島でも特に景観の優れた場所の一つであり、1935(昭和10)年に「隠岐知夫赤壁」との名称で国の名称天然記念物に指定されている。地元では昔から「あかかべ」または「あかだき」と呼ばれていたが、国の名称に指定された際に、中国の「赤壁の戦」に因み「せきへき」と名付けられた。

赤壁
赤壁は、島前カルデラ形成の初期、約600万年前に噴火した火山の火口が侵食されてできた断面である。最も高い場所で200mあり、噴火の様式や繰り返し噴出した溶岩の違いが、岩に様々な色と模様を生み出している。「竜宮乙姫の赤帯」とも呼ばれる赤い岩脈を垂直に断ち切る白っぽい岩は、「龍のぼり」と呼ばれている。

赤壁
岩が赤色になっているのは、噴火で飛び出した溶岩の飛沫に含まれる鉄分が高温のまま空気に触れて酸化したためである。黒い溶岩は赤い岩石と同じ玄武岩であるが、飛沫にならず流れていったので酸化していない。中央の白い部分は、後から割り込んだ別の成分の火山岩(粗面岩)である。

赤壁展望台より
展望所から北西方向に赤壁が見えるが、左の南西方向には、灰色から黒色がかった切り立った崖が見える。びっしりと草や地衣類が張り付いているが、黒っぽい玄武岩と思われる。

赤壁

赤壁は斜めに流れ落ちた何層もの溶岩の跡が地層のように認められるが、縦に食い込んだ溶岩にも強い勢いが感じ取れる。高い崖の上では、のんびり草を食む牛が放牧されている。

オキタンポポ
赤壁展望所への遊歩道沿いに、鮮やかな黄色いタンポポが咲いていた。隠岐固有種のオキタンポポであろうか。

オキタンポポ
オキタンポポであれば、セイヨウタンポポと違って、花の裏にある総苞が反り返らずにピッタリ花にくっついて支えているはずだ。ようやくオキタンポポTaraxacum maruyamanum)に出会えた。以前は隠岐諸島全域に分布していたというが、外来種セイヨウタンポポが年々増えつつあり、今まで見かけた道路沿いのタンポポはほとんどセイヨウタンポポという有様になっていた。セイヨウタンポポはオキタンポポと比べて、種子や綿毛が小さく、種の数が多く、受粉しなくても増える無性生殖で花期が長いため、繁殖力が圧倒的に強い。駆除に励んでいるとはいえ、残念ながら、オキタンポポに置き換わるのは時間の問題といえよう。

ベニシジミ

その貴重な隠岐固有種、オキタンポポシジミチョウ科のベニシジミ(Lycaena phlaeas)が吸蜜していた。春に日当たりの良い草原でよく見られる赤褐色の蝶である。日本全国に分布し、食草はスイバやギシギシなどのタデ科植物である。黒っぽい夏型より、赤っぽい春型が目立って艶やかである。

アカタテハ
こちらは中型のアカタテハVanessa indica)というタテハチョウ科の蝶である。日本全国に分布し、早春から晩秋まで、年に数回発生するが、個体数は秋に多い。食草はカラムシやヤブマオ、イラクサなどである。

猫ヶ岩屋古墳群
駐車場近くに猫ヶ岩屋古墳群がある。今から1700年余り前の古墳時代に作られた。古墳の盛土がすでに失われ、元の姿を見ることはできないが、直径十数メートルはあったと推定されている。現在、見ることができるのは亡くなった人を納めた玄室である。石を積んで作られた横穴式石室という遺構である。大きさは長さ5.3m以上、玄室の幅1.3m、入り口に近い部分の幅1m、高さ約1mである。

猫ヶ岩屋古墳群
古代人がこの地に古墳を築いたのは、ここから神島を望むことができることからかもしれないと考えられている。