半坪ビオトープの日記

知夫里島、赤禿山展望台

 

知夫里島、赤禿山展望台から赤灘の瀬戸を見る
隠岐3島目は知夫村知夫里島。本土から最も近い島で、約40km離れている。古代には知夫利、智夫、中世には千波とも表記された。島北の来居港からすぐ南回りに島を巡り、島西の赤禿山展望台に着いた。西北には西ノ島と向かい合う赤灘の瀬戸があり、その右手には大桂島が浮かぶ。

北には焼火山

少し右を見ると、北の焼火山には雲がかかっていた。島前の3島の大部分は630〜530万年前の火山活動により誕生した。中央部が陥没して島前カルデラができ、中央火口丘が焼火山である。カルデラの内海は穏やかで昔から嵐を避ける船の寄港地として知られ、近年では良質な岩牡蠣の養殖地になっている。眼下には小さな鈴島が認められ、その右手の小山に隠れた集落が古海(うるみ)で、姫宮神社がある。姫宮神社の創立は不明だが、元禄16年(1703)の「島前村々神名記」によると、祭神は姫宮大明神・倭姫命となっている。この古海地区には素戔嗚尊にまつわる「蘇民将来」の信仰が今日も伝えられており、毎年1月12日には「蘇民将来末社小神」と書かれた小さな木杭を集落の入り口に立てて、災の侵入を防いでいる。境内脇には1000年以上前の宮の影横穴群が残されている。

赤禿山展望台より南東を見る

高さが325mの赤禿山は、知夫里島の最高峰で、そこから島全体が南東に伸びる形になっている。今上がってきた道が右端に見え、その向こうにわずかに見える島は神島である。その左に浮かぶ島は浅島で、そこに面する岬は長尾鼻である。その向こうに突き出た半島に見えるのは島津島である。この赤禿山展望台周辺はハマダイコンいわゆる野大根の群生地である。

南に見える放牧地
南に目を転じると、今上がってきた道がくねくねと曲がっていて、柵に囲まれているのが確認できる。島前では1590年代から1970年頃まで「牧畑」という独特な農業が数百年間にわたって営まれていた。知夫里島では牧の境界に築かれた石垣=名垣が島の一部に残存し、現在も牛の放牧で活用されている。牧畑とは、痩せた土地ならではの農法で、放牧と畑作を順番に営むものである。島前各地では島を4つの「牧」に分割し、放牧と麦、豆、あわやひえの輪作を4年サイクルで繰り返すことで土地の肥沃さを保つという合理的な土地利用が行われていた。

ハマダイコン

この淡いピンク色の花は、アブラナ科ダイコン属のハマダイコン(Raphanus sativus var. raphanistroides)という多年草。日本全土の海岸の草地に生える。茎は高さ30〜70cm、根はあまり太くならない。従来、栽培ダイコンの野生化したものといわれていたが、最近では、大陸から古い時代に渡来した野生ダイコンの後代と考えられるようになった。別名ノダイコンとも呼ばれ、隠岐の沿岸部でよく見られる。ハマダイコンの根茎は辛味大根より辛く、薬味として利用できる。毎年春には知夫村で「野ダイコン祭り」が開催され、赤禿山一面に咲いたハマダイコンが見られる。

ヒメフウロ

こちらのピンク色のフウロソウ属の花は、ヒメフウロ(Geranium robertianum)と思われる。本州や四国の一部の石灰岩地に自生する越年草。葉は互生し、深く全裂し、小葉はさらに羽状に深裂する。淡紅色の花弁には2本の濃色の筋がある。雄蕊の葯は赤い。最近、ヤサカフウロ(G. purpureum)なる品種が帰化したとの話があるが、「松江の花図鑑」の東出雲、美保関のヒメフウロと比較して、2本の筋がやや不鮮明ながら同じと判断した。

スミレ
こちらの濃い紫色の花は、スミレ(Viola mandshurica)という多年草であろう。日本全土の日当たりの良いところに生える。和名は、花を横から見ると大工道具の墨入れに似ることからという説が一般的。アジア東北部に広く分布する代表的なスミレ。

ホンドタヌキ
道路脇の土手の上にホンドタヌキが辺りの様子を伺っているのを見つけた。知夫里島は人口に占める高齢者の割合が非常に高いことで知られるが、人よりもタヌキや牛の方が多いといわれる。タヌキは約3,000匹いるという。

放牧の牛

約600人という人口に対し、およそ1,000頭の牛が飼われているという。島のふた山が公共牧場として数カ所の牧に分けられ、20軒ほどの農家がめいめい放牧して牛を育てている。母牛と一緒に広い牧場でのびのびと育つ子牛は、なんとも羨ましい限りだ。

タネツケバナ
こちらの白い花は、アブラナ科タネツケバナ属のタネツケバナCardamine scutata)という越年草。日本全土の水田跡や道端に普通に生える。

タチツボスミレ
こちらのスミレはやはり今まで隠岐でよく見かけたタチツボスミレViola grypoceras)であろう。スミレの花はよく似たものが多く、同定が難しくていつも悩まされる。同定が間違えているかもしれないが、近縁種であることには間違いがなく、可愛い花であることに変わりはないと考えている。