隠岐の島町の東半分を一周する国道485号線を中村から南東に進むと布施集落に至る。隠岐では珍しい白い砂浜の海水浴場「春日の浜」に面する黒松林の中に春日神社がある。「日本の白砂青松百選」にも選定されている。樹齢350年を超える黒松が70本ほど群生し、「春日の森」とも呼ばれる。黒松の天然林としては全国で唯一、特別母樹林に指定されているが、近年はマツクイムシの被害で本数がかなり減っているそうだ。春分や秋分の日には朝日が鳥居の真ん中に昇る感動的な瞬間を体験できる縁起の良い神社として知られる。
鳥居を潜って境内に入ると、すぐ左手に大きな木の根が覆屋の中に安置されている。
これは昭和36年(1961)に黒松の樹高日本一を記録したことがある、60mに達する巨木の根株である。落雷で折れたという。
本殿は住吉造に千鳥破風と唐破風が付くというか、あるいは大社造で入り口が真ん中というか、どちらにしてもあまり見かけない特異で重厚な構造である。拝殿から幣殿、本殿と密に繋がっていて外から本殿の入り口は見えない。祭神は天児屋根命である。
珍しく、正面の鬼瓦には口の開いた「阿」の赤鬼が睨みを利かせている。妻飾りには猪目懸魚に似た蕪懸魚がつき、その周りには雲形の脇懸魚と降り懸魚があしらわれるなど装飾が派手である。隠岐造の水若酢神社本殿に負けず劣らず、大瓶束の脇の笈形もかなり大きい。
同じく石造物が四つあったが、詳細は不明。