半坪ビオトープの日記

中村海岸、一之森神社、八王子神社

中村海岸の妖怪像「さざえ鬼」

ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家水木しげるの故郷、境港の「水木しげるロード」にはたくさんの妖怪像が設置されているが、白島海岸の東、中村地区「武良郷」は、本名の姓「武良」から水木氏のルーツとされている。隠岐の島には妖怪像が10個以上設置されているが、この中村海岸にも「さざえ鬼」の妖怪像がある。月夜の晩には浮かれて踊る、30年以上生きたサザエの妖怪。出会った人は踊りが上手くなるという。

「さざえ丼」

中村海岸には「さざえ村」というさざえ料理店がある。人気メニューの「さざえ丼」は、サザエにあご出汁が効いた甘辛の卵とじで、とても美味しい。

「さざえカレー」
「さざえカレー」は普通のカレーにサザエが入っているだけで、ちょっと期待外れだった。他にも「突き牛カレー」や岩牡蠣などのメニューがあった。

一之森神社
中村集落の裏手に一之森神社がある。玉若酢命神社の「御霊会風流」と水若酢神社の「祭礼風流」とともに隠岐三大祭の一つである「隠岐武良祭風流」が行われる神社として知られる。

一之森神社の鳥居と神門
長い石段を上がっていくと大きな木製の鳥居が立ち、その先にしっかりとした神門が建てられている。この神社で隔年で開催される武良祭は、建久四年(1204鎌倉幕府佐々木定綱隠岐守護職に任じた際、天候不順で困窮した隠岐に故国の近江国から日月の神を勧請して日神を元屋の八王子神社に、月神を中村の常楽寺に奉斎し、日月陰陽和合の祭事を執り行ったところ、人畜は無病息災、五穀は豊穣となったことに由来するという。後で八王子神社も訪ねてみる。

一之森神社の拝殿
一之森神社の主祭神天児屋根命とし、月夜見尊応神天皇、大山咋尊、蛭子尊、櫛御気奴野命を配祀する。櫛御気奴野命は一般的には須佐之男命とされている。武良祭風流の中心は月夜見尊であり、月を表すウサギを神体としているところから、通称「月天さん(月天子社)」と呼ばれているという。武良祭風流では、日神・月神の神体を1丈4尺4寸(約4)の竿を頭上に捧げて御幸する。尊像は宝珠の円盤に日神は「三本足の烏」を、月神は「白兎」を浮き彫りにしている。密教の守護神の十二天の中に、日天子と月天子がいて、「三本足の烏」「兎」を持つ像容もある。日天・月天は太陽神と月神で、神道では天照大御神と月読尊に相当する。

拝殿入口の奉納画
拝殿の入り口に奉納画が掛けられている。男性が角髪(みずら)という古代の髪型なので、主祭神天児屋根命かもしれない。『古事記』によれば、天児屋根命天照大御神の岩戸隠れの際、岩戸の前で祝詞を唱えたとされるので、その様子かもしれない。天児屋根命祝詞の神様と言われている。

本殿の妻飾りの二重虹梁には大瓶束や笈形
本殿の妻飾りの二重虹梁には、珍しく豊臣家の紋として有名な「五三の桐」の彫刻が掲げられ、その上の大瓶束の両側の笈形も堂々としている。拝み懸魚と降り懸魚も施されるなど、本殿建築の意匠に強い装飾意欲が感じられる。

境内社四社
社殿右裏手に四社境内社が認められたが、詳細は不明。濵田神社や西里趣明神などが祀られているそうだが、確認できなかった。

八王子神社の鳥居と随神門
一之森神社と田圃を挟んで向かいの元屋(がんや)に、日神・日天が安置されている八王子神社がある。境内からは六世紀ごろの土器が発見されて、古代に何らかの祭祀の場であったと考えられている。赤茶色の屋根の随神門の先に拝殿が見える。

八王子神社の拝殿
八王子神社の現在の祭神は天照大神とされるが、社名から祭神は八王子であった可能性が高い。八王子とは須佐男尊と天照大神の誓約によって生まれた五男三女神を呼ぶ場合と、須佐之男命の八柱の御子を呼ぶ場合や、須佐之男命を牛頭天王と解釈し、牛頭天王の8人の王子神を呼ぶ場合がある。日天・月天から神仏習合が強く想定され、最後の例が相当すると思われる。拝殿の扉は閉められていて中を見ることはできなかった。