半坪ビオトープの日記

終点の名剣温泉


峡谷を進むと崖にはいろいろな花が咲いている。この黄色の花は、オミナエシ属のハクサンオミナエシ(Patrinia triloba)である。本州北陸地方以北の日本海側の山地帯から亜高山帯の岩場に生える多年草で、高さは20~60cmになる。葉は掌状に3〜5裂する。花冠が5裂した径約6mmの小花を集散花序につける。別名、コキンレイカ(小金鈴花)という。

こちらの赤い花は、ハギ属のヤマハギ(Lespedeza bicolor var. japonica)である。日本全国の山野に生える落葉半低木で、高さは約2mになる。葉は3出複葉、小葉は広楕円形で先は円形となる。葉の脇から総状花序を出し、紅紫色の蝶形花を開く。

この風変わりな形の花は、キンポウゲ科センニンソウ属のクサボタン(Clematis stans)という。本州各地の山地の草原や林縁に生える日本固有の半低木で、高さは1mになる。葉は1回3出葉で、小葉は長さ4~13cmの卵形で3浅裂する。茎から集散花序を出し、淡紫色の細い鐘状の花を多数つける。4枚の花弁に見えるのは萼片で反り返り、花弁はない。

こちらのすっくと伸びた花は、クガイソウ属のクガイソウ(Veronicastrum sibiricum)である。本州各地の山地や草地に生える多年草で、高さは120cmになる。葉は4~8枚が輪生するので、九蓋草、九階草の名がある。茎の先に穂状の総状花序をつけ、淡紫色の多くの小花を咲かせる。下から咲き上がるので、この花は咲き終わりに近い。

こちらのシモツケソウは、コシジシモツケソウ(Filipendula auriculata)と思われる。本州の日本海側(富山県から山形県)の山地から深山のやや湿った場所、林縁に生える多年草で、高さは100cmになる。淡紅色の小さな5弁花を散房状に多数つけ、元気よくはじけるように咲く。

欅平駅から15分ほど歩いてようやく名剣温泉に着いた。名剣山(1,906m)南麓、黒部川の支流祖母谷(ばばだに)にある。さらに奥には祖母谷温泉があるが、さらに35分もかかるのでここをこの旅の終点とした。

昼食も宿泊もできる名剣温泉の建物の奥に露天風呂がある。峡谷沿いには、アジサイ属のノリウツギHydrangea paniculata)が白い花を咲かせていた。日本各地の山野に普通に生える落葉低木で、高さは2~4mになる。葉は長さ5~10cmの卵状楕円形で、先は鋭く尖り、縁に細鋸歯がある。枝先に円錐花序を出し、小形で5弁の両性花多数とその周囲に直径1~5cmの装飾花をつける。

名剣温泉は、かつてはもっと上流にあったが、昭和44年の洪水で流失したため現在地に移転したという。旧湯元から引湯した硫黄泉の男女別露天風呂があり、男湯は「かたくりの湯」という。峡谷での日帰り温泉をゆっくり楽しんで、7月下旬の3泊4日、立山・黒部の旅を終えた。