半坪ビオトープの日記

谷川岳の花


イワカガミ属にはイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)とオオイワカガミ(S. s. var. magnus)、コイワカガミ(P. s. form. alpinus)などがあるが、コイワカガミは主に中部地方の高山に咲き、花数が1〜5個なので、ここには咲いていないと思われる。イワカガミとオオイワカガミは非常によく似ていて、後者の葉が少し大きいというけれども比較できない。主に日本海側の山地に咲くのがオオイワカガミとされるが、葉の縁の鋸状はそれほど鋭くないので、この花は日本全国に自生するイワカガミであろう。

オモトに似た広い葉の間から花茎を伸ばし、白く小さな花を咲かせているのは、ツバメオモト(Clintonia udensis)である。北海道と近畿地方以北の本州の深山に生える多年草で、花後、花茎を伸ばし、濃い藍色の液果をつける。

初夏の山道を歩くと白い花の低木がいろいろある。これはスイカズラ科のムシカリ(Viburnum furcatum)、別名オオカメノキ。日本全国の山地に生え、高さは2〜5mになる落葉低木。右下に見えるように葉は卵円形で、散房花序に小さな両性花をつけ、ふちに白い5裂の装飾花が取り巻く。

こちらの紅紫色の鮮やかな花を咲かせているのは、ムラサキヤシオ(Rhododendron albrechtii)。北海道および本州中部地方以北の主に日本海側の山地に自生する落葉低木で、葉と同時か先に開花し、枝先の花芽に1〜4個の鮮紅紫色の花をつける。

イワカガミの花色は基本、淡紅色だが濃淡もかなりあり、これは最も淡い花色である。白花種も別にあるが、それはやや緑色を帯びる。

こちらの色鮮やかなドウダンツツジは、ベニサラサドウダン(Enkianthus campanulatus var. palibinii)で、サラサドウダンの地域変種である。中部地方北部から東北地方南部の山地に生える落葉低木で、花は釣鐘状で下を向き、紅色の花弁に濃い紅色の筋が入る。

やがて前方の視界が開けて、谷川岳の残雪を抱いた勇姿が垣間見えた。天神尾根の急登が始まるまでもう少し歩くことにする。

足元にはイワナシ(Epigaea asitica)の小さな淡紅色の花が咲いている。北海道と本州の主に日本海側の山地に自生する常緑小低木で、卵状長楕円形の革質の葉が互生する。枝先の総状花序に数個の鐘型の花をつけ、秋に熟す小さな果実はナシのような味があって食べられる。

こちらは日本全国のやや湿った草地に自生するショウジョウバカマ(Heloniopusis orientalis)。常緑の多年草で、ロゼッタ状の細長い葉の中心から伸び出る花茎の先にやや下向きに淡紅紫色の花を咲かす。花色は変化に富む。花の色と根生葉の重なりが袴に似ることにより名づけられた。

こちらの薄紅色の花は、イワウメ科のイワウチワ(Shortia uniflora)という。本州の山地に広く自生する常緑の多年草で、日本固有種である。円形の葉脇から出た花茎に、直径3cmの花を一輪ずつつける。

このイワカガミが今日見た中で最も紅色が濃いと思われる。左下のヤブコウジに似た赤い実は、イワカガミの葉に隠れて全体が見えないため何の実かわからない。

緩やかな道も終わったあたりで、ようやく熊穴沢避難小屋に着いた。谷川岳山頂まで距離は半分だが、コースタイムはまだ2時間以上必要だ。ここから見上げるような急登が始まる。この上に進めば高山植物がたくさん現れるのだが、体力と膝に不安があるのでここで引き返す。

この淡紅色のシャクナゲは、本州中部地方から東北地方中部までの山地に自生するアズマシャクナゲ(Rhododendron metternnichii var. pentamerum)である。花冠は漏斗状鐘型で、ツクシシャクナゲホンシャクナゲの7裂に対し、5裂する。

帰りがけにまた、シラネアオイ(Glaucidium palmatum)を見つけた。シラネアオイ属の多年草だが、1属1種の日本固有種である。日光白根山に多いことから名づけられたが、清楚な感じでたいへん美しい。