半坪ビオトープの日記

月窓亭、大崎

西之表市、月窓亭
西之表市の中心地から少し坂を上ったところにある月窓亭は、江戸時代中期の延享2年(1745)、当時種子島家の家臣だった羽生能貴が建てた屋敷である。

月窓亭
1886年に種子島27代島主守時を迎えてからは、種子島家のお屋敷として親しまれ、多くの著名人が訪れた。

種子島のひな祭り
市に譲渡された現在では、当時の面影が残されたまま、月窓亭として一般公開された。季節ごとにひな祭りや、端午の節句など、昔ながらの年中行事を再現した展示を行っている。種子島のひな祭りは、女の子が誕生して初めての節句の日、夜に親類縁者がやってくる。ダーに花や餅で飾ったお膳を持って集まってくる。床の間には土人形が飾られ、ダーが並べられる。ダーは大根を10センチほど切ったものを置き、季節ごとの花を差して飾る。周囲には紅白の丸餅、緑色の蓬餅などが添えられる。ダーとは台(お膳)のことである。このような光景は大正時代まで続いたが、現在では見られない。

月窓茶(月桃茶)
入館するとまずは月窓茶(月桃茶)と種子島の食材を使ったお茶菓子を出してもらえる。月桃は、ポリフェノールを非常に多く含み、独特の香りとほのかな甘味は清涼感があり、リラックス効果抜群という。抗菌作用が強いので葉っぱで餅や肉を包んだり、油を絞ってアロマオイルにしたり、虫除けに使ったりする。

月桃
庭には月桃も植えられている。月桃ショウガ科の多年草の薬用植物で、熱帯から亜熱帯のアジアに分布し、種子島佐多岬が自生北限とされる。6月ごろに桃に似た色合いの花の蕾をつけるのが、月桃の名前の由来である。種子島の人々は、月桃のことをシャニンやサネンと呼んでいる。

ヘゴと観葉植物モンステラ
月窓亭の中庭や庭園など敷地内に自生している植物は、その数なんと300種以上という。絶滅危惧種だけでも20種類もあるそうだ。小さな池の向こうには大型シダの一種ヘゴが植えられている。種子島にはこの亜熱帯に生息するヘゴが、約7万平方メートルにわたって自生している。手前の池ぎわに生えているのは、観葉植物のモンステラ。茎は太く羽状に大きく切れ込んだ葉が特徴。大きく育つと白い仏炎苞と緑色の肉穂花序をつけた花を咲かせる。三本の肉穂花序が認められる。果肉はバナナとパイナップルを合わせたような味で美味しいという。

ショウベンの木
こちらはミツバウツギ科ツルビニア属のショウベンの木。面白い和名は、春先に枝を切ると切り口から臭気の強い樹液が大量に出ることからつけられたという。四国南部、九州から沖縄にかけて分布する。

クワズイモ
こちらはサトイモクワズイモ属のクワズイモ。四国南部、九州以南の奄美沖縄群島に分布する。奄美沖縄群島では道端や林などに広く自生している。食べられないだけでなく、毒草であり、中毒事故に注意が必要である。

シマタニワタリ
こちらはチャセンシダ科チャセンシダ属のシマタニワタリという常緑シダ。種子島屋久島以南、沖縄、小笠原に分布する。

ポインセチア
こちらはよく観葉植物で見かけるポインセチア。原産がメキシコと中央アメリカの常緑性低木。標準和名はショウジョウボクで、ポインセチアは通称である。観葉植物としては短日処理を行い、クリスマスの時期に合わせて紅葉させ、緑色の葉とのコントラストを楽しむ。

テトラデニア
こちらの淡い藤色の花は、園芸植物のテトラデニア(Tetradenia riparia)という。南アフリカ原産の非耐寒性の多年草低木で、日本には明治末期に渡来したという。和名はフブキバナ(吹雪花)というが、花色は白または淡紫色を帯びる。

リュウガン(龍眼)
この大木は、ムクロジ科のリュウガン(龍眼)という常緑高木。果樹として栽培され、果実は球形で径約3cm。果肉は乳白色で特有の風味があり生食される。赤尾木城下でもカンラン、ライチ、キコク、レイシなどと共に薬用として栽培され、山川や佐多の島津藩薬草園でも植栽されている。篤姫はレイシやリュウガンの蜂蜜漬けを好んでいて、島津藩篤姫のいる江戸へ送っていたそうだ。

大崎漁港近くの海岸線
西之表から種子島最北端の喜志鹿崎へ向かう途中、板敷鼻に立ち寄るために大崎漁港近くで県道581号から左に分かれて海沿いの道を進む。海岸線は北北西に向かっていて、遥か彼方に陸地が見える。約50km先にある大隅半島の先端部、佐多岬辺りだ。

大崎漁港近くの海岸線
翻って南を見やれば、海岸線の彼方に海に突き出た岬が見える。西之表港を囲む洲之崎と箱崎であろう。