半坪ビオトープの日記

徳之島、犬の門蓋、めがね岩

徳之島、犬の門蓋、展望台
5月上旬に奄美群島の徳之島を訪れた。長寿の島、子宝の島として知られる徳之島。豊かな生態系と闘牛文化の残る島。2021年には島の一部が世界自然遺産に登録された。空港に降り立つとまずは空港のすぐ南にある景勝地、犬の門蓋(いんのじょうふた)に赴く。入口に2015年に完成した展望台があるので早速上ってみた。

南の海岸に見えるキノコ岩
展望台からは犬の門蓋を直接眺めることはできない。まず目につくのは、南に広がる海岸線にある奇妙な形の岩の一群で、キノコ岩と呼ばれている。

キノコ岩
この辺りの崖は、珊瑚礁の隆起によって100150万年前に形成された石灰岩礁であるが、地質学的にはこの島で最も新しい地層とされる。キノコ岩は波が下部を浸食し、草に覆われた丸い上部が残ったというが、浸食後に草が生えたと思われる。

真西には硫黄鳥島
展望台から真西の海の向こうに硫黄鳥島が見えるというが、かなり晴れ渡っていても確認できなかった。硫黄鳥島は、沖縄県の最北端の島で、久米島町に属する。沖縄県内唯一の活火山島である。14世紀後半から明王朝進貢する硫黄の産地として知られ、琉球王国が終了する19世紀中頃まで、琉球と明・清朝朝貢関係を繋ぐ重要な島であった。

北に見える寝姿山
北の方を眺めると、徳之島の最北の山並みが見える。真ん中より左側が空港からも見えた、通称、寝姿山である。東を見やると大和城(やまとぐすく)山(251m)が垣間見える。中世の山城で、玉城(たまぐすく、平土野)の言い伝えがある。

犬の門蓋を巡る遊歩道
展望台から西北の海岸を眺めると、アダンの林に沿って犬の門蓋を巡る遊歩道が荒々しい崖に向かっている。

アダンの林
遊歩道脇のアダンの林は密集した群落を作っていて中に分け入ることはできない。アダン(Pndanus odoratissimus)は、タコノキ属の常緑小高木で、熱帯から亜熱帯、日本では南西諸島のトカラ列島以南、奄美や沖縄の沿岸に生育する。果実は熟すと黄色からオレンジ色になり、甘い芳香を発する。

クロマダラソテツシジミ
遊歩道を進むと、ソテツに小さな蝶が群がっていた。ソテツの若葉を食べる、クロマダラソテツシジミLuthrodes pandava)というシジミチョウである。インドからインドネシア、フィリピン、台湾などに分布し、日本では南西諸島に生息するが、日本列島南岸にも飛来する。翅面には青い金属光沢、翅裏には褐色の斑紋列がある。美麗な蝶であるが、ソテツが食害される被害が報告されている。

めがね岩
海岸に向かって下っていくと、隆起珊瑚礁が長年にわたって侵食された光景が広がる。二つの大きな洞門がメガネをくり抜いたように見える「めがね岩」がとりわけ目を引く。

めがね岩
めがね岩の合間からは、東シナ海の青い水平線や浸食された荒々しい崖を眺めることができる。

浸食された海岸
犬の門蓋は浸食されためがね岩をはじめ、奇岩や断崖がいくつもみられるが、特にめがね岩を含む光景は、絶好のサンセットスポットとして知られている。
 

浸食された隆起珊瑚礁
犬の門蓋という名前の由来は、昔、大飢饉の折に犬が群れをなして人畜に被害を及ぼしたので、これを捉えて海中に投げ捨てたことからついたと伝えられている、と案内板に書かれているが、現在では根拠がなく名称の起源は不明とされる。

隆起珊瑚礁の地層
海岸にはゴツゴツと特異な形状の岩場が広がるが、よく見ると隆起珊瑚礁の地層も二層あるように見える。この地域の海は、1月から3月にかけて、ザトウクジラが現れることでも知られている。