半坪ビオトープの日記

秋田駒ケ岳

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秋田駒ケ岳
秋田駒ケ岳は、十和田八幡平国立公園の南端に位置する北東北の名峰の一つであり、秋田県一の標高を誇る。乳頭温泉郷や乳頭山からも登山道で繋がっているが、男女岳(1637m)・男岳・女岳の総称である。田沢湖高原温泉郷のアルパ駒草からマイカー規制されている駒ヶ岳8号目までシャトルバスが運行している。8号目に着くと、目の前には片倉岳の裾野が広がり、左手の地肌がむき出しになっている日窒硫黄鉱山跡が眺められる。

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オオバキスミレ
鉱山跡に近づいた道端に黄色いスミレが咲いていた。オオバキスミレViola brevistipulata)という多年草。北海道南西部、本州近畿地方以北の日本海側に分布し、山地帯〜亜高山帯の林下や林縁、草地などに生える。花期は4月中旬〜7月。直径1.5cmほどの黄色の花弁の唇弁と側弁には褐紫色の筋がある。和名の由来は、他のスミレと比べて葉が大きく黄色の花であることによる。

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日窒硫黄鉱山跡
8号目から見た、日窒硫黄鉱山跡のすぐ脇を登山道は上っていく。

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乳頭山
北東を眺めると、乳頭山(1477m)が乳首のような姿を見せていた。右の尾根続きの先には笊森山(1541m)が構えている。八幡平は乳頭山の左手の彼方に広がる。

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片倉岳展望台
半時間ほどで片倉岳展望台(1456m)に着く。クマ出没注意の標識が目を引く。前方(西南)に田沢湖の姿が少し見えてきた。

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ミヤマダイコンソウ
足元にはミヤマダイコンソウ(Geum calthifolium var. nipponicum)という多年草。ミヤマダイコンソウ属(Acomastylis)に分類されることもある。北海道・本州中部以北・奈良県大峰山、四国の石鎚山の亜高山帯〜高山帯の岩隙、砂礫地に生育する。花期は7〜8月。直径2cmほどの5弁花を咲かせる。頂小葉は直径2〜12cmと非常に大きい腎円形で光沢があり、縁には鋸歯がある。

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田沢湖
さらに進むと田沢湖の全景が右前方(西南)に見えてくる。田沢湖はほぼ円形で直径は約6km、水深が423.4mと日本で最も深く、コバルトブルーの湖面の美しさには定評がある。

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チングルマ
ようやく高山植物が咲き乱れるお花畑らしくなってきた。この花は、雪解け後のお花畑の常連、チングルマSieversia pentapetala)という落葉小低木。北海道と本州中部以北の高山帯の雪田周辺の砂礫地、渓流沿いや砂礫の多い草地に生育する。高さは約10cm。葉は奇数羽状複葉。花は帯黄白色で枝先に1個ずつつき、花弁5個、広楕円形で縁は波打つ。先端に残る花柱は、花後3cmほどに伸び、紫褐色の絹毛が開いて羽毛状になり、風に戦ぐ姿が可愛らしくなる。

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タカネキスミレ
こちらの黄色のスミレは、タカネキスミレ(Viola crassa ssp. crassa)という多年草。東北地方の岩手山秋田駒ケ岳早池峰山焼石岳などの高山帯の砂礫地に生える日本固有種。花期は6〜7月。葉は腎円形で厚くて光沢がある。花は濃黄色。上弁と側弁は上を向き、唇弁は大きく暗紫色の筋がある。よく似たキバナノコマノツメのようには先が尖らない。

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イワカガミ
こちらも高山でよく見かける可憐なイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)という常緑の多年草。北海道〜九州の高山帯〜山地に分布し、草地や岩場に生育する。葉は厚く光沢があるため、岩鏡と呼ばれた。葉身は円形で縁には鋸葉がある。花期は4〜7月。花茎の先に3〜10個の花を総状花序につける。花は淡紅色。花冠は径1〜1.5cmになり、漏斗状で5裂し、裂片の縁はさらに裂けて房状になる。その独特な姿が印象的である。イワカガミにはいくつも似た種類があるが、これは最も普通のイワカガミと思われる。

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ムシトリスミレ
こちらのスミレに似た花は、タヌキモ科ムシトリスミレ属のムシトリスミレ(Pinguicula vulgaris)という多年草の食中植物。北海道と本州中部以北、四国の石立山の亜高山帯〜高山帯の湿地、湿った草地や岸壁に生える。葉は長楕円形で内側に巻く。表面に密生した腺毛と腺体から消化粘液を出して小さな虫を捕食する。スミレに似た花は、青紫色で基部に尖った距を持つ。

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ハクサンチドリ
イワカガミの左の花は、ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)という多年草。北海道と本州中部以北の亜高山帯〜高山帯の草地に生える。礼文島や八幡平でも見かけた高山植物の代表的な花の一つである。紅紫色の花は総状に数個〜10数個つき、花弁は鋭く尖り、唇弁の裂け方は変異が多い。

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秋田駒ケ岳のお花畑
残雪がまだ見かけられたが、平らなお花畑はチングルマを中心に波打つように広がっている。お花畑というとハクサンイチゲシナノキンバイが有名だが、秋田駒ケ岳には自生していない。

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阿弥陀池

ようやく阿弥陀池に辿り着いた。秋田駒ケ岳には何度も来ているが、今までで一番晴れていたと思う。ここでゆっくりと休憩する。

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男岳
右の方(西)には男岳(1623m)が構えていて、左手から稜線伝いに登っていく人の姿が認められた。頂上までは20分ほどである。