半坪ビオトープの日記

男岳が見える


草の間から青紫色の花を咲かせているのは、キキョウ科のハクサンシャジン(Adenophora triphylla var. hakusanensis)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の草地に生える多年草で、高さは20~60cmになる。葉は披針形で、3〜5枚が輪生する。縁には尖った鋸歯がある。花期は7〜8月で、数個ずつ2〜3段ほど釣鐘状の花を輪生する。花柱は花冠から突き出て、基部は円筒状の花盤で囲まれる。ほかのシャジンの仲間は、この花盤が杯状なので区別できる。

ウゴアザミの向こうには、ようやく男岳(1623m)の全体が認められるようになった。全体が草地で覆われている男女岳よりは、岩も少しは認められて変化がありそうなので、予定を変えて男岳に登ることにしよう。

こちらの白い小花を咲かせているのは、オヤマソバ(Aconogonon nakaii)である。北海道と本州中部地方以北の高山帯の砂礫地に生える多年草で、高さは15~50cmになる。茎は太く、しばしば紅紫色を帯び、よく分枝して稲妻形に曲がる。葉は長さ4〜12cmの卵形でほとんど柄がなく、両面とも無毛である。花期は7〜9月。花は白色または淡紅色を帯び、円錐状に多数つく。

笹の間から青紫色の花を咲かせているのは、エゾオヤマリンドウ(Gentiana triflora var. japonica f. montana)である。北海道と本州山形県以北の亜高山帯〜高山帯の草地に生える多年草で、高さは10~40cmになる。花期は7〜9月。花つきが悪く、ほとんど茎先だけに数輪咲く。釣鐘型の花冠の先は浅く5裂するが、天気の悪いときは閉じている。

いつのまにかよく整備された木道を進むことになる。後ろを振り返ると、荷葉岳周辺の山並みと、さらに彼方には森吉山がかすかに認められる。

草原には白いオヤマソバの群落があったり、ハクサンボウフウなど様々な花が咲いている。手前に見えるセリ科の花はアマニュウであろう。右手前の白い花穂は、シロバナトウウチソウである。

バラ科ワレモコウ属のシロバナトウウチソウ(Sanguisorba albiflora)は、東北地方の高山帯の草地に生える多年草で、高さは30~40cmになる。葉は奇数羽状複葉。小葉は3〜6対あり、楕円形で鋭い鋸歯がある。花期は8〜9月。穂状花序は5cmほどで上部から開花する。花は白色だが花弁はなく、花弁状の萼片が4個ある。雄しべは4個で、萼片から突き出る。

左手に男女岳(おなめだけ、女目岳とも書く、1637m)の全体が見えてきた。秋田駒ヶ岳で一番高く、秋田県の最高峰であるが、秋田駒ヶ岳の本峰は男岳(1623m)とされ、男女岳は寄生火山、女岳(1512m)は火口丘とされる。標高が低いため正確な意味での高山帯を持たないが、頂上効果によって広大な偽高山帯が発達している。

そのうち男女岳と男岳の間に草原が開けてきて、真正面には横岳(1583m)の姿が現れてきた。

この辺りはいろいろな花々が咲き乱れるお花畑で、数百種類の高山植物群は北日本一ともいわれ、国の天然記念物に指定されている。7月頃の最盛期には白いチングルマや赤いイワカガミ、黄色のミヤマキンバイやミヤマダイコンソウなど色鮮やかな花が競い合うのだが、8月も中旬になるとやはり花数が少なくなってくる。