半坪ビオトープの日記

乗鞍岳、畳平

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エコーライン、三本滝レストハウス

7月末に乗鞍岳に行った。標高3,026mの剣ヶ峰を主峰とする乗鞍岳は、大小の3,000m近くの峰々が聳え立ち、バスで行ける畳平を中心に山岳観光のメッカとなっている。岐阜県側の乗鞍スカイラインは土砂災害のため通行止めなので、長野県側の乗鞍高原からのエコーラインをバスに乗って向かう。三本滝レストハウスを眼下に見下ろすあたりからバスは高度を上げていく。下界は晴れているが、上の方は雲が湧いているのが気にかかる。

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乗鞍岳、畳平

案の定、畳平は霧に包まれて何も見えない。標高2,702mと日本一高いところにあるバスターミナルまで気軽に上がれるのは楽なのだが、お花畑さえ見晴らせないのは悲しい。主峰の剣が峰に登る体力はもうないので、畳平を囲む富士見岳(2,817m)か大黒岳(2,772m)でも登って見ようと思っていたが天気には勝てない。何も見えなかったお花畑が帰り際になって一瞬姿を現したかと思う間も無くまた霧の中に隠れてしまった。

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畳平のお花畑

数年前に来た時はかなりの雨の中でお花畑を見て回ったが、今回は霧だけなので近くの花々を見ることができるだけでも幸いだ。バスターミナルから一歩遊歩道に下りると左手にもうお花畑が始まる。白いハクサンイチゲと黄色いミヤマキンポウゲの群落は代表的なお花畑を形成している。

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クロユリの群落

遊歩道の右手にはクロユリの群落が広がっている。これだけ密集している光景は珍しく畳平ならではであろう。

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クロユリとモミジカラマツ

クロユリFritillaria camtschatcensis)は、ユリ科バイモ属の多年草で、本州中部地方以北、北海道、ロシア東部、北アメリカ北西部の高山帯に分布する。茎先に鐘状の花を数個下向きにつける。花被片は6個で暗紫褐色、少し黄色が混じる。日本では可憐な花とされるが、花に悪臭があるので、英語では「skunk lily(スカンクユリ)」「dirty diaper(汚いオムツ)」などの別名がある。白い花は、キンポウゲ科モミジカラマツ属のモミジカラマツ。中部地方以北と北海道の高山帯の湿り気のある場所に生える多年草。花弁はなく白いのは雄しべである。名前は、花がカラマツの葉の付き方に似て、葉がモミジの葉に似ていることから付けられた。

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コイワカガミ

こちらの花の形が個性的な赤い花は、コイワカガミSchizocodon soldanelloides)である。イワウメ科イワカガミ属の常緑多年草で、北海道から九州までの草地や岩場に生育する高山植物として親しまれているが、実質的には低山帯から高山帯まで幅広く分布する。葉は厚く光沢があり、イワカガミの「鏡」の由来となっている。高さ10-20cmになる花茎を伸ばし、先端に3-10個の花を総状花序につける。花冠は漏斗状で5裂し、裂片の淵はさらに裂ける。この花の形は珍しい。

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アオノツガザクラ

こちらの可憐な花もお花畑でよく見かける常緑小低木の高山植物で、ツツジツガザクラ属のアオノツガザクラPhyllodoce aleutica)という。茎は地を這い、よく分枝する。線形の葉は密に互生する。枝先に4-10個の花を下向きにつける。花冠は淡い黄緑色で、壺型の先端が浅く5裂する。北海道と本州中部以北に分布し、高山帯の雪渓脇などの湿り気のある岩場や草地に生育し、しばしば群生する。千島、樺太カムチャッカ、アラスカにも分布する。右下にかろうじて見える白い花は、キンポウゲ科オウレン属のミツバオウレンCoptis trifolia)である。常緑の多年草で、根出葉は3出複葉である。白い花弁に見えるのは萼片で5枚あり、花弁は黄色で萼片より小さい。本州中部以北と北海道の亜高山帯から高山帯の針葉樹林内や林縁、湿地に生育する。

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チングルマ

こちらのクリーム色の花は、バラ科ダイコンソウ属のチングルマGeum pentapetalum)である。本州中部以北と北海道の高山の雪渓周辺の多湿地に生える、落葉小低木の高山植物である。葉は羽状複葉。花期は6-8月とされるが、お花畑では早めに花が散る。花後、花柱が伸びて放射状に広がる。果実は痩果。和名は、この実の形が子供の風車に見えたことによる稚児車(ちごぐるま)が転じてつけられた。

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ミヤマダイコンソウ

こちらの花は、バラ科ダイコンソウ属のミヤマダイコンソウ(Geum calthifolium var. nipponicum)である。北海道と本州中部以北、奈良県大峰山、四国の石鎚山の亜高山帯〜高山帯の岩隙、砂礫地に生育する多年草。頂小葉は直径2-12cmと大きく、端が鋸葉で光沢がある。茎葉に剛毛がある。花は鮮黄色で5弁花を咲かせる。