半坪ビオトープの日記

展望台への道


ゴゼンタチバナの間に咲く白い花は、ユリ科マイヅルソウ属のマイヅルソウ(Maianthemum dilatatum)である。北海道から九州の山地帯上部から高山帯の林床に生える多年草で、高さ5~25cmになる。葉は普通2個の卵心形で、小さな花が総状につく。液果は赤く熟す。

こちらの白い花は、キンポウゲ科オウレン属のミツバオウレン(Coptis trifolia)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の針葉樹林の林内、湿原などに生える常緑の多年草で、花茎の高さは5~10cmになる。根生葉は3出複葉で光沢がある。花弁に見えるのは白い萼片で、高杯状の黄色い花弁は極めて小さい。

白くて小さい花を下向きにいくつも咲かせているのは、ユキノシタ科ズダヤクシュ属のズダヤクシュ(Tiarella polyphylla)である。北海道、本州近畿地方以北、四国の山地帯から亜高山帯の針葉樹林内や林縁のやや湿ったところに生える多年草で、花茎の高さは10~40cmになる。根生葉は心円形から広卵形で浅く5裂する。総状の花も白い花弁に見えるのは萼片で、小さな花弁は針状である。ズダヤクシュ(喘息薬種)という名は、薬草として喘息に効くことに由来する。

濃い紅色の花を咲かせているのは、バラ科キイチゴ属のベニバナイチゴ(Rubus vernus)である。北海道西南部と本州中部地方日本海側の亜高山帯から高山帯の林縁や渓流沿いに生える落葉低木で、高さは1~1.5mになる。トゲはなく葉は普通3出複葉で、頂小葉が最も大きくなる。枝先に2cmほどの花が1個ずつ下向きに咲く。径3cmの集合果は黄赤色に熟し食用となる。

こちらの目立たぬ花を咲かせているのは、ユキノシタスグリ属のコマガタケスグリ(Ribes japonicum)である。北海道と本州中部地方以北、四国の山地帯から亜高山帯の渓流沿いや林縁に生える落葉低木で、高さは約1mになる。葉は互生し、5中裂する。花序は10~15cmで垂れ下がり、約1cmの花を総状につける。5個の萼片が花弁のように見える。径8mmの液果は赤黒色に熟し食べられる。

大きな葉に白い花を咲かせているのは、メギ科サンカヨウ属のサンカヨウ(Diphylleia grayi)である。北海道と本州中部地方以北、大山の山地帯から亜高山帯の林内や広葉草原に生える多年草で、高さ30~60cmになる。下の葉は長さと幅が10~30cmと大きく、腎円形で粗い鋸歯があり長い柄がある。上の葉は小さくほとんど無柄。数個の白い花の直径は2cm。萼片12個のうち外側の6個は緑色で開花すると落ち、内側の6個は白く花弁状をしている。濃い青紫色で白い粉を帯びる液果は食用になり甘い。

こちらの大きくアップした花は、カタバミ属のコミヤマカタバミ(Oxalis acetosella)である。北海道と本州近畿地方以北、四国、九州の山地帯から亜高山帯の針葉樹林内などに生える多年草で、花茎の高さは5~15cmになる。葉は長い葉柄をもつ3小葉で、倒心形をして角が丸いいわゆるハート形である。花径は2~3cmであり、白い花弁には脈があって淡い紅紫色を帯びる。

車輪状に広げた大型の葉に目を見張るような優美な花を咲かせているのは、ユリ科キヌガサソウ属のキヌガサソウ(Kinugasa japonica)である。本州中部地方以北(日本海側)の山地帯から亜高山帯の林内に生える多年草で、高さ30~80cmになる。ツクバネソウ属(Paris japonica)に分類されることもある。

長楕円形の葉は6〜11枚輪生し、縁は全縁になる。白い花は径6〜7cmで、外花被片(萼片)は6〜11枚ある。2010年英国のキュー王立植物園は、日本固有種のキヌガサソウがこれまでの記録の中で細胞一つあたりのゲノムサイズが最大であると報告している。和名の由来は、放射状に並ぶ葉状を奈良時代の高貴な人にさしかけた衣笠に見立てたものである。しかし、整った葉の上に咲く白い花の姿は、森の中の貴婦人のような清楚さを感じさせ、この花に出会えただけで立山に来てよかったと思わせる。