翠楽苑は、一周10分の回遊式庭園であり、池に面した松楽亭では抹茶を楽しむことができる。
松楽亭の向こうには、南湖神社が微かに見え、庭園の廻りは緑濃い木々に覆われている。
上池に面した松楽亭の後ろに見える山は月待山という。松楽亭からこちらを見ると鏡山が背景となるはずである。どちらも定信が設けた南湖十七景の景勝地に含まれる。
湖のここもかかみの山なれや こころうつさぬ人しなければ
白河藩主 松平定信
庭に配された岩の間にユキノシタ属のダイモンジソウ(Saxifraga fortune var. alpina)が咲いていた。日本全国の山地から平地まで広く分布し、湿気のある岩上に生育する。花が「大」の字に似る。
庭の奥には大岩を積み重ねてこしらえた幾段かの滝があり、勢いよく水が流れ落ちている。
よく見ると滝の右手に黄色いホトトギスが咲いている。
葉の長さからキイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草、Tricyrtis macranthopsis)と思われる。紀伊半島の深山の崖に自生する多年草で、絶滅が危惧されている希少種であり、上臈というように気品があり、愛好家に人気がある。
滝の左隣、庭のはずれに木々に隠れるように茶室秋水庵がある。定信楽翁公は、茶の道に深く、「茶導訓」など茶道観を著したものもあり、茶道観が遠州流と共通するとして、四畳台目高台寺遠州好茶室を模して茶室が建設された。