半坪ビオトープの日記

千畳敷遊歩道を剣ヶ池へ

 

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ミヤマリンドウ

八丁坂を下り終え、千畳敷カールの遊歩道に合流し、剣ヶ池に向かう。足元に咲くこの可憐な花は、リンドウ属のミヤマリンドウ(Gentiana nipponica)という日本固有種。北海道と本州中部以北の高山帯の湿原や湿り気のあるところに自生する多年草。茎先が立ち上がり、高さ5-10cmになる。葉は対生し、卵状長楕円形で厚め。茎上部に青紫色の花を4個ほどつける。花冠は5裂し、裂片の間に小さい副片がある。

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千畳敷カールと剣ヶ池

遊歩道を進み、南側に回り込んでようやく剣ヶ池についた。宝剣岳2,931m)直下に広がる氷河地形千畳敷カールは、カール全体が「雪崩の巣」と呼ばれたりする典型的なカールである。カールとは、氷河の侵食作用によって削られたお椀状の谷で、圏谷ともいう。

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剣ヶ池に映るサギダルノ頭

剣ヶ池という名は宝剣岳に由来すると思われるが、池に宝剣岳を映しこむのは難しいので、宝剣岳の南に続く尾根に聳えるサギダルノ頭(2,858m)を剣ヶ池に映した。かなり雲が出てきて空が青くないのが残念だが。

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ゴゼンタチバナ

剣ヶ池からロープウェイの千畳敷駅まで少し登る。足元の小さな白い花は、ミズキ属のゴゼンタチバナCornus canadense)という多年草である。北海道と本州中部以北、四国の亜高山帯から高山帯の針葉樹林下や林縁に生育する。葉は2枚の対生葉と腋生の短枝に2個ずつ葉がつき、計6枚の輪生に見える。花は小さく10数個が集まってつく。白い花弁に見えるのは1cmほどの4個の総苞片で、ハナミズキヤマボウシに似る。やや盛りを過ぎている。

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シナノオトギリ

岩陰に咲いていたこの花は、オトギリソウ属のシナノオトギリ(Hypericum kamtschaticum var. senanense)という多年草。本州中部の亜高山帯から高山帯の岩礫地に生える。近縁種のイワオトギリ(var.hondoense)とよく似て、葉には黒点と明点があるが、基準標本が木曽駒ケ岳なのでシナノオトギリとしたが、厳密には萼片に黒線があることを確認すべきである。

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ハクサンシャクナゲ

こちらの花は、ツツジ属のハクサンシャクナゲRhododendron brachycarpum)という常緑低木。北海道と本州中部以北、四国の亜高山帯から高山帯の針葉樹林中に生育する。葉は厚い革質。花は白色またはほのかに紅色を帯び、枝先に十数こが集まってつく。花期は6〜7月なので、すでにほとんどの花が落ち、わずかに一輪咲き残っていた。

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ウメバチソウ

こちらの白い花は、ウメバチソウ属のコウメバチソウParnassia palustris var.tenuis)という多年草。北海道と本州中部以北の高山帯の草地や湿地、岩隙などに自生する。雄しべ5個があり、仮雄しべが糸状に7裂し、先端に黄色の腺体がつく。近縁種に、仮雄しべが15-22裂するウメバチソウと、9-14裂するエゾウメバチソウがある。

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ヤマハハコ

こちらの白い花は、キク科ヤマハハコ属のヤマハハコ(Anaphalis margaritacea)という。北海道と本州中部以北の山地帯から高山帯の乾いた草地に自生する雌雄異株の多年草。茎や葉の裏に白い綿毛がある。高さ約50cm、高山では20-30cmとなる。頭花は散房状に多数つく。総苞は直径約5mmの球形。種小名のmargaritaceaは「真珠状」の意味で、光沢のある総苞片を真珠に例えたもの。

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シャシャンボの蜜を吸うメスグロヒョウモン

千畳敷からしらび平駅に降り、バスで麓の駒ヶ根高原・萱の台バスセンターに戻る。駐車場脇に咲いていたこちらの白い花は、スノキ属のシャシャンボ(Vaccinium bracteatum)と思われる。総状花序に壷状鐘形の白い花をたくさん咲かせる植物には、ネジキ属のネジキ(Lyonia ovalifolia var. elliptica)という落葉低木もあるが、葉が革質であることから常緑低木であるシャシャンボと判断する。シャシャンボは千葉県以西の沿海地の林内、谷筋に自生するが、晩秋になると「サシブ」と呼ばれる黒紫色の実を熟し、「日本のブルーベリー」として親しまれ、庭植えされるようになっている。

左下で花の蜜を吸っている蝶は、タテハチョウ科ヒョウモンチョウ族のメスグロヒョウモン(Damora sagana)のメスである。左上には一般的なヒョウモンチョウの体色をしたオスが飛んでいるが、メスはイチモンジチョウ類に近く黒っぽく、オスメスの体色が別種のように異なる極端な性的二形を持つ。日本全国に分布するが、生息数はそれほど多くない。丘陵地の森林周辺部で各種の花に訪れて花の蜜を吸うが、飛ぶ速度は他のヒョウモンチョウのように速くはない。