半坪ビオトープの日記

天草から長島へ


天草諸島は、上島と下島を主島とし、多くの小島も含んで海岸線は変化に富み、景勝地がたくさんある。時間も少ないので、絶景との評判が高い妙見浦だけ訪れた。大江の集落からすぐ北にある妙見浦は、天草灘の波と風が作り上げた奇岩が連続する天草西海岸の風光明媚な景勝地で、国の名勝および天然記念物に指定されている。一帯には100m級の断崖が陸に差し迫り、無数の岩礁や洞窟が見られる。

キューバダイビングのスポットとしても人気があり、夕陽の名所としても知られる。妙見浦近くの十三仏公園という崖の上から眺めると象の形の島が見えるという。その公園には、与謝野夫妻の歌碑がある。
鉄幹「天草の十三仏の山に見る 海の入日とむらさきの波」、晶子「天草の西高浜のしろき磯 江蘇省より秋風ぞ吹く」

天草最南端ののどかな漁港の牛深には、目を見張るような牛深ハイヤ大橋がある。パリのポンピドゥーセンターや関西国際空港を手がけた、イタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏の設計によって平成9年に完成した。全長883mと県内最長を誇り、車道と両側歩道を合わせた幅員16mという巨大な橋であり、途中に分岐の交差点もある。ただし、このような天草諸島の最南端に、ただ漁港を跨ぐだけの、車がほとんど走らない、こんな大きな橋を総工費122億円もかけて造る必要があるのか、大きな疑問を感じざるを得ない。

牛深は、牛深ハイヤ祭りの牛深ハイヤ節で知られるが、全国のハイヤ系民謡の元祖である。ハイヤとは、「南風(はえ)」をハエの風と呼ぶことから転訛したといわれる。昔から天然の良港として知られる牛深に、風待ちやシケ待ちのため寄港した船乗りたちが唄い伝えたという。
港内の水深は深く、古来より物資流通の拠点、また避難港として栄えた牛深港には、海産物販売や漁業の歴史資料館、世界の貝の展示場などの施設が集まる「うしぶか海彩館」がある。フェリー待ちの時間に、その二階の海鮮レストランで昼食をとる。

海苔がたっぷりかけられた海鮮丼もいいが、やはり見るからに美味しそうな「きびなごづくし」を注文した。寿司、かき揚げ、刺身、酢の物、干物など、十分きびなごの味を堪能できた。これだけ揃って1300円と割安なのもうれしい。

こちらは焼魚と刺身のセット。焼魚は、地元で「エメズ」というヨコスジフエダイとのこと。西日本特産なので初めて食べるのだが、牛深名物というだけあって美味である。

食事が済んだところでフェリーに乗る。熊本県の天草牛深港から鹿児島県の長島にある蔵之元港まで、毎日10便フェリーがあるので、天草を縦断した場合とても助かる。

牛深から蔵之元まで片道30分で着く。出港してすぐ振り返ると、牛深ハイヤ大橋と金比羅山を擁する下須島が見える。

下須島の南の小さな築の島、法ヶ島(宝島)が、牛深海域公園として、日本で初の海中公園に指定されていて、牛深港から出るグラスボートで海中公園遊覧を楽しむことができる。

前方には戸島が見える。戸島から左手が熊本県で、戸島の右手彼方に見える陸地が鹿児島県である。

程なく到着する蔵之元港は、鹿児島県出水郡長島町にあるが、ここは鹿児島県最北部の長島という大きな島の最西端である。九州本土の阿久根市とは、全長502mの黒之瀬戸大橋で結ばれている。長島は古墳の島といわれるほど多くの古墳があり、5〜7世紀にかけて200基以上の古墳が造られた。