6月初旬に、かねてから待望の五島列島を旅した。羽田を6時過ぎに飛び立ち、福岡で乗り継ぎ、10時過ぎには福江空港に着いた。早速、福江港ターミナルの遊麺屋(ゆめや)にて、五島名物の五島うどんを使った「あごだしちゃんぽん」を食す。具材は、板カンボコ、揚げカンボコ、チクワ、イカゲソ、豚肉、キャベツ、タマネギなど。あごだしスープが特に美味しい。
昼食後、グラスボート「シーガル」で久賀(ひさか)島に向かう。福江港を出てすぐに左に見えるこの島は、無人島の屋根尾島。造礁サンゴやソフトコーラルの群生などが美しく、福江海中公園に指定されている。大型の台風2号の接近で雲が多い。
戦国時代に日本に伝わったキリスト教の布教時代に始まり、禁教令による弾圧から潜伏の時代、復活の時代と、五島列島も長崎や天草同様大きな歴史的変遷を遂げている。この浜脇教会も久賀島を離れる直前に立ち寄る予定だ。久賀島の住民は現在約300人である。
2018年7月にユネスコの世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連資産」12のうちに五島列島の4つの集落が含まれている。その一つ「久賀島の集落」は、共同体を維持するために、五島藩の政策に従って島の未開拓地に移住して信仰を続けた集落である。幕末から明治にかけてキリシタン弾圧の厳しさは増していき、1868年には「五島崩れ(牢屋の窄弾圧事件)」と呼ばれる厳しい弾圧が行われ多くの死者を出した。その殉教地にこの「牢屋の窄記念教会」が建てられている。詳しくは帰りがけにもう一度訪れることにして先に進む。
久賀島の世界遺産のメインである旧五輪教会堂へは、田ノ浦港から車で40分の車両進入禁止の看板から徒歩10分と久賀島を縦断し、細い道を進む。林の中の道を抜けるとエメラルドグリーンの美しい海が広がっている。奈留瀬戸という。海の向こうに見えるのは奈留島である。手前の大きなシダの群落もとても美しい。シダの仲間は同定が難しいが、大きさから見て多分、フモトシダ(Microlepia marginata)であろう。
右手に進むと五輪漁港と新旧の五輪教会堂を含む五輪集落が見えてくる。この五輪地区は久賀島のなかでいまだに直接車で行くことができない陸の孤島である。ツアーでは福江島から海上タクシーなどの船で向かうようだ。
静かな海岸には瓦葺きで木造の旧五輪教会堂と、オレンジ色のモダンな外観の五輪教会堂が並んで建っている。旧五輪教会堂は老朽化のためすぐそばに五輪教会が新築されたが、解体の危機を乗り越え貴重な文化財として保存されることになった。信徒は五輪地区と蕨小島の人々だが、過疎化が激しく極めて僅かだという。