半坪ビオトープの日記

大倉岩、おみ坂


岩がするどく天に向かって屹立している。向こうに見えるのは鳥海山である。

登山道脇の岩は険しい姿を見せ、近づかないようロープが張られている。

山頂はまたもや霧に隠れて見えなくなったが、手前右の厳しい急坂の第一おみ坂が姿を現す。やはり青森県最高峰の岩木山だけあって、9合目までリフトで上っても最後は見上げるほどの急登が安直な登山者をふるい落そうとしている。

まもなく大倉岩という標識のある大きな岩が右手に現れた。その向こうには、弘前工業高校生の「対馬正美君殉難の地」なる標柱が立っている。その傍らには大館鳳鳴高校生の遭難者慰霊碑がある。

大倉岩の手前にはダケカンバのほかにもたくさん草木が見られる。この赤紫色の花は、八甲田山でも見かけたウゴアザミ(Cirsium ugoense)である。東北地方に特産するアザミで、頭花が上を向く。

こちらのセリ科の白い花は、ミヤマセンキュウ(Conioselinum filicinum)である。北海道と本州中部地方以北の山地帯〜亜高山帯の広葉草原や林縁に生える多年草で、高さは40~80cmになる。葉は1〜2回3出羽状に全裂する。終裂片は卵形でさらに羽状に全裂し、先は尖る。茎や枝の先に複散形花序をだし、白い小花を密につける。種小名のfilicinum は「シダ状の」の意味で、葉の切れ込み方がシダ植物に似ることによる。

大倉岩を過ぎるとすぐ「鳳鳴ヒュッテ」という避難小屋に着く。標高1400mに位置するこの小屋は、昭和39年(1964)の厳冬期に起きた、大館鳳鳴高校生4名の遭難事故の翌年に建てられたものである。百沢コースと嶽コースの分岐点でもあり、ここから第一おみ坂の急坂が始まる。ゆっくり登るしかあるまい。

坂の途中でシラネニンジン(Tilingia ajanensis)の花がかたまって咲いているのを見つけた。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の草地や岩隙などに生える多年草で、高さは5~40cmになる。根生葉は3回羽状に全裂し、終裂片は倒卵形でニンジンやパセリの葉に似る。茎先や上部の葉腋に複散形花序をだし、白い小花を密につける。

第一おみ坂は、落石も心配なほど見た目以上に急坂で、這うようにして登るがすぐに息が切れる。

一休みして後ろを振り返ってみると、鳳鳴ヒュッテがほぼ真下に小さく見える。