半坪ビオトープの日記

岩木山山頂


急な第一おみ坂も15分ほどで登りきると、しばらく平坦な道が続く。木々の間に「夢のカプセル」という標識が立っていた。なにか夢のあるものを埋めているのだろう。

この辺りにもウゴアザミの群落がある。8月も半ばになると花がめっきり少なくなるので、大柄なウゴアザミはよく目立つ。

足下にはミヤマホツツジ(Cladothamnus bracteatus)の花が咲いている。花冠は外側が赤みを帯びた帯緑白色で、3全裂する。裂片は長さ約1cmで反り返る。花柱の先は急に上に曲がっている。萼は5全裂する。

こちらの黄色い花は、イワオトギリである。既に最盛期を過ぎていて、かろうじて最後の花が咲いている。

再び急な坂を上る。第二おみ坂といって先ほどよりは多少楽である。あと少し登りきれば頂上はもうすぐだ。振り返ってみると、陽が射しているがまだ雲も見える。

ようやく岩木山頂上に着いたが、岩場をよじ上った先の山頂に、草がぼうぼうと茂っているのに違和感を感じる。

岩木山は古くから山岳信仰の対象とされていて山頂には岩木山神社奥宮がある。丹後国の郎党大江時廉の陰謀によって滅ぼされた岩城正氏の子、安寿と厨子王丸の伝説が残されており、安寿が岩木山に祀られているため、岩木山の神は丹後国の人を忌み嫌うという言い伝えがあった。丹後国の人が当地に入ると風雨が打ち続く悪天候となり、船の出入りができないとして厳しく吟味され、入り込んだ丹後国の人は追い出されたという。

岩木山神社で毎年旧暦8月1日に行われる例大祭「お山参詣」は津軽地方最大の農作祈願祭で、国の重要無形民俗文化財に指定されている。多くの人々が五穀豊穣や家内安全を祈願して、深夜に山頂を集団登拝し御来光を拝む。参詣時に唱える言葉は、「懺悔懺悔(サイギサイギ)」「六根懺悔(ロッコンサイギ)」など修験系のものである。現在のように一般の人々による参詣ができるようになったのは明治以降である。登拝が済むと「跋折羅(バダラ)踊り」を踊りながら下山する。

奥宮の岩陰にもイワオトギリの黄色い花が咲いていた。左上の茶色のギザギザな萼片は、ネバリノギラン(Aletris foliata)の花後の姿である。ノギ(芒)とは稲や小麦などの穂先が尖った部分のこと。萼片が反り返りぼさぼさに見えるが、もともと花もそれほど見栄えがしない。

山頂にはほかにもいくつかの植物が見られた。この小さな花は、高山性のタカネミミナグサに似ているが、よく見るとどこにでも生えているミミナグサ(Cerastium holosteoides var. hallaisanense)と見られる。北海道〜九州の道端、畑などに生える多年草で、高さは10~30cmになる。茎は暗紫色を帯びて細かい毛がはえる。葉は卵形〜長楕円状披針形で対生し、全縁で両面に毛がある。花弁は5個で、先は2浅裂する。岩木山は9合目までリフトで上がれる便利さがあるが、麓の雑草の種も持ち上がられているようで、高山植物の植生が破壊される恐れがある。尾瀬の入口に置いてあるような泥落としマットが、リフト乗場に必要と思う。

岩木山は円錐形のコニーデ型成層火山で、山頂は三つの峰に別れており、弘前側から見た右が巌鬼山、左が鳥海山とされる。中心の岩木山は鐘状型の中央火口丘であり、山頂に一等三角点が設置されている。