半坪ビオトープの日記

岩木山、鳥ノ海噴火口


右手に鳥海山(1502m)へ上る道を分けて、真っ直ぐ鳥ノ海噴火口に下る道を進む。ここはすでに9合目で、標高1470mある。岩木山山頂(1625m)までちょっと下ってから上るが1時間もかからないだろう。

歩き始めるとすぐ足下にいくつか花が咲いていた。黄色い花は、イワオトギリ(Hypericum kamtschaticum var. hondoense)である。北海道に分布するハイオトギリの変種である。高山に分布するオトギリソウの仲間は信州や北海道に多く、八甲田でも見かけたが東北地方では本種だけが知られている。中央の白い花は、8〜9月によく見かけるヤマハハコである。白い小花は、高山でよく見かけるハクサンボウフウである。

霧が少し晴れて、正面には岩木山の急峻な崖が見え始めたが、まだ全貌は見渡せない。

上に見える白いセリ科の花は、イブキゼリ(Tilingia holopetala)である。北海道と本州中部地方以北の深山に生える多年草で、高さは30~80cmになる。葉は2回3出羽状複葉で、小葉は卵形で羽状に分裂する。8〜10月、枝分かれした茎先に複散形花序をつくり、白い小花を多数咲かせる。伊吹山には分布していない。手前の黄色い花は、よく見かけるミヤマアキノキリンソウである。

ようやく真下に鳥ノ海噴火口の鞍部が見えてきた。麓から吹き上げる霧が通過するせいか、霞んでいる。右側の崖下が鳥ノ海噴火口である。

最近の研究では、岩木山の溶岩ドームの形成時期は、約5万年前に西法寺森溶岩ドーム、約3〜1.5万年前に鳥海山溶岩ドーム+岩木山頂西溶岩ドーム、約5〜6千年前に岩木山中央溶岩ドーム+岩木山山頂溶岩ドーム、約2千年前に鳥ノ海溶岩ドームが形成されたと推定されている。また、1600年以降、文書に記録された噴火がいくつもあるが、それらはいずれも水蒸気爆発とされる。その中で一番規模が大きかった天明3年(1783)の噴火では、新火口を形成して周囲に火山灰を降らせ、天明の大飢饉の一因となった。今では鳥ノ海噴火口も岩で覆われているが、いつ再び爆発が起こるかわからない。

鳥ノ海噴火口の鞍部を越えて、いよいよ岩木山山頂への登りにかかる。霧が深いと道に迷うような岩場である。

ゴツゴツした岩場を登っていくと、岩の間にイチゴの葉に似たミヤマキンバイの葉が見える。この辺りでは、6月から7月にかけて、ミヤマキンバイの黄色い花がたくさん咲くことで知られている。同じ頃、岩木山特産のミチノクコザクラも可憐な姿を見せるので、岩木山に登るにはその頃が最適とされるが、なかなかそうもいかない。

一息ついて後ろを振り返ると、鳥海山のリフト乗場がほぼ同じ高さに見える。

霧も少しずつ晴れてきて、ようやく岩木山山頂が見えるようになった。9合目からとはいえ、かなり急な登山道だ。

やがて鳥海山の崖下も見下ろすことができるようになる。