半坪ビオトープの日記

大師堂、三重塔


観音堂の右手に弘法大師堂が建っている。昭和59年に弘法大師生誕1200年を記念して建立された。

前住職清昭和上が高野山四国八十八ヶ所を巡拝し持ち帰った聖地の石を堂内の宝前に巡らして、踏んで巡れるようにしてある。

弘法大師堂の裏手の森の中に三重塔があるのだが、森の入口辺りにいくつか花が咲いていた。青紫色の花は、オクトリカブト(Aconitum japonicum)と思われる。北海道と本州の中部地方以北の山野の湿った所に生える多年草で、高さは50~180cmになる。花期は8~10月。花びらに見えるのは萼であり、萼の中に細長い花弁が2個ある。トリカブトの類は猛毒で知られるが、本種は特に毒性が強いという。
右下の白い花は、コモチミミコウモリ(Cacalia auriculata var. bulbifera)である。多くの解説書に北海道特産とあるが、このように本州北部の山野にも生える多年草で、高さは60~120cmになる。葉柄の基部に黒褐色の珠芽(むかご)ができるのが特徴である。

この白くて長い穂状の花は、白布温泉近くでも見かけたサラシナショウマ(Cimicifuga simplex)である。穂先に止まって吸蜜しているチョウは、オオウラギンスジヒョウモン(Argyronome ruslana)である。北海道から九州の山地に分布し、暖地には少ない。暖地では6月中・下旬、山地・寒冷地では7〜8月に姿を見せ、夏期には一時休眠し、秋に再び出現して産卵する。

こちらの黄色い花は、キツリフネ(Impatiens noli-tangere)である。北海道〜九州の山地の湿った所に生える1年草で、高さは40~80cmになる。花期は6~9月と長い。細い花柄の先に釣舟形の黄色い花が垂れ下がる。

境内にはアジサイがたくさん植えられていて、初夏には全山見事に満開となるため、別名アジサイ寺と呼ばれる。弘法大師堂裏手の杉木立の中に入ると、大きくて古めかしい宝篋印塔が建っていた。

鬱蒼とした杉林の右奥に進むと、大きな石造の三重塔が建っている。高さは約5mあり、宝暦7年(1757)に建立された。一番下の階には五輪塔が2基、中の階には大日如来と四仏、最上階には摩尼宝珠がそれぞれ安置されている。

笹野観音堂は総本山を奈良の長谷寺に、大本山を東京音羽護国寺に仰いで、真言宗豊山派に属している。詳しくは長命山幸徳院笹野寺と称する。茅葺の観音堂は、桁行3間、梁間4間の木造入母屋造で、正面には軒唐破風の上に千鳥破風が構えていて、その鬼瓦の処に赤い水神の顔が木で彫られている。

こちらの破風の鬼瓦にも顔が彫られている。風神か雷神であろう。妻飾りの蕪懸魚鰭付の鰭も草の葉、雲、花と多く、中央の六葉も凝っている。妻壁の二重虹梁大瓶束にも彫刻が存分に施されている。

境内には芭蕉以外にも句碑がある。「長閑さやうまれたまゝのひがしやま」文化12年(1815)に亡くなった米沢の藩医、山口立玄の句である。