半坪ビオトープの日記

緑岳登頂断念


この辺りから風当たりが強くなるせいか、アザミ属に似たトウヒレン属の花が多くなる。砂礫地にべたっと張り付くように生えるウスユキトウヒレンが代表的だが、この花は、その1品種として知られるユキバトウヒレン(Saussurea yanagisawae f. nivea)である。ウスユキトウヒレンと同じく、北海道の大雪山十勝岳羊蹄山などの高山帯の砂礫地に特産する多年草で、高さは5~15cmになる。根生葉は厚く、長さは3~8cm、幅は2cm前後の披針形または長楕円状披針形で先は鋭く尖る。葉にはクモ毛があり、表面と縁には縮毛があり、葉の裏面に白い綿毛が密生する。

こちらもウスユキトウヒレンの品種で、ユキバタカネキタアザミ(S. y. f. vestita)という。母種と同じ場所に自生しする。根生葉の幅が広く、卵形〜卵状三角形で基部はしばしば心形になる。葉の裏面に綿毛が密生する。

こちらも同じくウスユキトウヒレンの品種で、ホソバエゾヒゴタイ(S. y. f. angustifolia)と思われる。大雪山に特産し、母種より大型で高さ20cm以上になるものもある。根生葉は非常に細く、線状披針形で、基部は葉柄に向って伸びる。ウスユキトウヒレンの品種は、毛の種類や量、葉の形などに変化が多く、中間型もあって見分けるのは難しい。

ヤマハンノキなどの木の陰になるところでは、丈のあるチシマアザミ(Cirsium kamtschaticum)が咲いている。北海道の亜高山帯の草地に生える多年草で、高さは50~100cmになる。葉は羽状に深裂するものから切れ込みのないものまで変異が多く、このように全縁のものもかなりある。

風の強いところでは、コバノクロマメノキ(Vaccinium uliginosum var. alpinum)が見られ、藍黒色の実がなっている。北海道と本州中部地方以北の高山帯の風衝地に生える落葉小低木で、高さは3~8cmと小型で、葉も長さ1cmほどとかなり小さい。クロマメノキの高山型である。

ここまでほとんど休憩しなかったので、大岩が現れてきたところで軽食休憩にした。後ろを振り返ると、第一花畑と思われる黄緑の草原の左手に尾根が続き、シバ山(1,483m)が見える。その彼方にも高い山が認められる。

アップしてみると、右に石狩岳(1,967m)、左に音更山(1,932m)が認められた。石狩岳は山が深く、健脚登山者でないと登ることはできない。

大雪山の大縦走路を見やると、高根ヶ原の大雪渓も大きくなり、忠別岳(1,962m)へと続く縦走路の向こう側にさらに山並みが見えてきた。化雲岳(1,954m)とその尾根だと思われる。

アップしてみると、忠別岳のすぐ右手に化雲岳らしき山が見え、そのすぐ後ろに王冠のようにギザギザの山が見える。大雪山連峰で最も憧れの的となっているトムラウシ山(2,141m)である。「大雪の奥座敷」とも呼ばれるトムラウシ山は、とても奥深い山で山小屋などもほとんどなく、夏期でも健脚者向きの山である。若い時にテントを背負って縦走した時に登ったことがあるが、色とりどりの広大な花畑と美しい湖沼などの大自然が残されていて、まさに天上の楽園といえよう。

ハイマツもほとんどなくなり、大きな岩がごろごろする登山道を、早くも下りてきた女性が「そぐそこの尖った大岩の辺りで、ナキウサギが鳴いていましたよ」と教えてくれた。100mもないかもしれない。だが休憩したせいか急に疲れを感じ出して、その100mの急坂を登る気力が湧かない。緑岳(2,019m)山頂まではあと500m位で、1時間もかからないと思われるが、下山のことを考えるとそろそろ体力の限界かもしれない。
緑岳山頂に登れば、大雪山中央部の多くの山々が見晴らせると期待していたが、懐かしいトムラウシ山を垣間見ただけで満足するしかない。怪我しないうちにと、登頂を断念し引き返すことにした。