半坪ビオトープの日記

大雪高原の蝶


第一花畑を過ぎると、後は林の中を下って行くので、最後にもう一度緑岳を眺めておく。登頂できなかったのは残念だけど、上ホロカメットク山をはじめ、都合4回も大雪山の山にアタックできたのは上出来だった。黒岳で霧に遭ったが、雨は一度も降らなかった。もう少し体力をつけて、いつかまた大雪山に登りたいと思う。

急坂の林間コースを下りるのは、膝に負担があって嫌なものだが、見晴台を過ぎればあと30分もないだろう。道端のイチゴは、ノウゴウイチゴ(Fragaria iinumae)である。北海道と本州の大山以北(日本海側)の亜高山帯〜高山帯の林縁や湿り気のある草地に生える多年草で、根茎から長い匐枝を出して殖える。葉は根生し、長い柄の先に3小葉をつける。花は径2cmほどで、花弁は7~8個。実は甘くて美味しい。

満開のオオハナウドに吸蜜しているのは、よく見かけるヨスジハナカミキリ(Leptura ochraceofasciata)であろう。上二つのスジが切れているが、個体変化の範囲内と思われる。

こちらの小さな可愛い花は、キキョウ科のタニギキョウ(Peracarpa carnosa var. circaeoides)である。北海道〜九州の山地帯〜亜高山帯の林縁のやや湿ったところに生える弱々しい多年草で、高さは5~15cmになる。葉は互生し、卵円形〜広卵形で縁に粗い鋸歯がある。花は1個上向きにつけ、花冠は6mm前後で深く5裂する。

こちらの小さく白い花は、コガネイチゴである。エイコの沢上流部で、この実を見つけたが、こんな低いところで今度は花を見つけた。雪が遅くまで残っていたと思われる。花弁は4個か5個だが、4個の方が多い。

薄暗い林の中でかろうじて咲いていたのは、ハクサンシャクナゲ(Rhododendron brachycarpum)である。北海道、本州の中部地方以北、四国の亜高山帯〜高山帯の主に針葉樹林中に生える常緑低木で、高さは1~3mになる。葉は厚い革質で、長さ6~15cmの倒披針形である。花は白色またはほのかに紅色を帯び、枝先に10~20個が集まってつく。花冠は径3~4cmの漏斗形で5裂し、内側に緑色の斑点がある。地味だがキバナシャクナゲとは違った趣がある。

ようやく緑岳登山口まで戻った。ここから高原温泉までは緩やかな下りなので、花に群がる蝶を見ながら進む。山の上でよく見かけたエゾシロチョウが、ヨツバヒヨドリの花に吸蜜していた。翅の薄い雌である。

こちらのセセリチョウは、オオチャバネセセリ(Polytremis pellucida)である。北海道から九州までの丘陵地から高山にかけて生息するが、西南日本には少ない。最もよく似たイチモンジセセリは北海道には少なく、後翅裏面の白紋で区別する。

こちらの可憐なチョウは、コヒオドシ(Aglais urticae)という。北海道では低地から高地にかけて広く分布するが、本州では中部地方の標高1300m以上に生息し、典型的な高山蝶と呼ばれる。大雪山には、北海道中央高地に産するウスバキチョウやダイセツタカネヒカゲ、アサヒヒョウモンという珍しい高山蝶が生息しているが、残念ながら今回は見かけなかった。

こちらのヒョウモンチョウは、ウラギンヒョウモン(Fabriciano adippe)である。日本各地に分布しているが個体数は少ない。よく似たギンボシヒョウモンとは、後翅裏面の星の数で区別する。
ようやく大雪高原温泉にたどり着き、4回の日帰り大雪山トレッキングを全て終えた。温泉で汗を流し、その日のうちに次の然別湖へ向った。