半坪ビオトープの日記

ナスを使ったチキンクスクス

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鶏もも肉2枚

北アフリカ料理のチキンクスクスは、ほとんどトマト煮込みだが、トマトを使わない料理を試してみた。鶏もも肉2枚をそれぞれ半分に切り、塩小2をふりかけておく。

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ナスとニンニクを切る

ニンニク1片を薄切りにし、ナス3本を半月切りにする。

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鶏もも肉を炒める

深めの鍋にオリーブオイル大3を熱し、鶏もも肉を皮を下にして中火で炒める。

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鶏もも肉を裏返す

5分炒めたら鶏もも肉を裏返す。

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ナスとニンニクを加える

ナスとニンニクを加え、さらに炒める。

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白ワインを加える

白ワイン1/2カップを加え、蓋をして数分煮る。

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コリアンダー、クミンパウダー、チリパウダーを加える

コリアンダー、クミンパウダー各小1、チリパウダー小1/2を加える

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クスクスと熱湯を加える

クスクス1カップと熱湯1カップを加え、全体を混ぜたら蓋をして蒸す。

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出来上がり

3分蒸したら出来上がり。

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ナスを使ったチキンクスクス

ついでに作ったクスクスのサラダ(タブレ)を添えてみたが、組み合わせとしては野菜サラダの方がよかった。

 

アサリのナムプリック・パオ炒め

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ナムプリック・パオ

前回に続き、バイ・ホーラパーを使うタイ料理に挑戦してみた。アサリのナムプリック・パオ炒めには、タイの辛味調味料、ナムプリック・パオを使う。ナムプリック・パオ(チリ・イン・オイル)は、乾燥唐辛子、ニンニク、干しエビ、ホーム・デーン、タマリンドなどを炒めたペースト。ホーム・デーンは赤ワケギとも呼ばれる紫色の小タマネギ。

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バイ・ホーラパー他

この料理にも、タイのスイートバジルとも呼ばれる、バイ・ホーラパーを使う。他にニンニク、ブリック・キーヌー(乾燥唐辛子)、パプリカ、ピーマンも使う。

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アサリとシーユー・カーオ

アサリ約200gをよく洗う。シーユー・カーオ(白い醤油)は、大豆から作る醤油。なければ、薄口醤油でも代用できる。タオ・チオは、味噌で代用できる。

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ニンニクと唐辛子を炒める

フライパンにサラダ油大3を熱し、ニンニクと乾燥唐辛子のみじん切りを炒める。

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アサリを炒める

香りが出たら、アサリを入れて蓋をし、2〜3分炒める。

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ナムプリック・パオ他を加え、炒める

ナムプリック・パオ、オイスターソース、シーユー・カーオ、砂糖各小2。タオ・チオ小1を加えて炒め合わせる。

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バイ・ホーラパー他を加える

さらにバイ・ホーラパー、パプリカ、ピーマンを入れる。

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牛乳を加えて出来上がり

牛乳大6を加えて軽く炒め、出来上がり。

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アサリのナムプリック・パオ炒め

ちょっとアサリの身が小さかったけれど、バイ・ホーラパーやナムプリック・パオの風味が物珍しく、美味しく感じた。

 

宇奈月へ戻る

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黒部峡谷の「下の廊下」

欅平駅にはビジターセンターがある。黒部峡谷の誕生や歴史、地質、動植物など映像や写真により紹介している。黒部峡谷黒部川黒部ダムまで遡る「下の廊下」には、S字峡、十字峡という険しい絶壁があり、ベテランの上級登山者でも超難関の登山ルートがある。

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新山彦橋

帰りのトロッコ電車も、黒部峡谷の様子を名残惜しくじっくり眺めつつ宇奈月へ戻った。宇奈月ダムを過ぎて新山彦橋が見えると、宇奈月の町が見えてくる。

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ロッコ記念撮影場所

宇奈月の食堂で最後の食事をとったが、宇奈月ビールは好評なのか売り切れだった。土産物を買いながら湯の町を散策した後、やまびこ遊歩道に向かうと、トロッコ広場ややまびこ展望台があり、トロッコの模型が設置してある記念撮影場所もあった。

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旧山彦橋

階段を上がって遊歩道を進むと、黒部川に架かる旧山彦橋が見える。その左手の小さな橋は道路橋である。

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旧山彦橋

この旧山彦橋は、今は遊歩道となって歩いて渡れ、トロッコ電車を間近に見ることができる。

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新山彦橋とトロッコ電車

橋には時刻表も貼ってあり、黒部川を渡るトロッコ電車を真横から狙い撃ちで撮れる。

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遊歩道のトンネル

橋を渡りきると遊歩道もトンネルに入る。冬季歩道を真似たトンネルだが、天井はかなり高く造ってある。

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宇奈月ダム

トンネルを出ると宇奈月ダム展望台に着く。遊歩道はダムまで続くが、ここで折り返す。宇奈月ダムは、多目的ダムとして黒部川水系で初めての、そして唯一のダムである。展示施設もあり、一般公開されている。近くには黒部川とトロッコ電車を眺められる、日帰り温泉の「とちの湯」も開設されている。

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宇奈月神社

山彦遊歩道入口近くに宇奈月神社がある。祭神は天照大神大山津見神、大山久比神、軻遇突智神、水波象女神、誉田別命の六神。大正時代に黒部の電源開発に伴い宇奈月温泉が開湯し、発電関係会社の協力のもと昭和2年に創立された。ちなみに大山久比神とは、記紀にみえる農耕・治水の神であり、軻遇突智カグツチ)神とは火の神であり、水波象女神(ミヅハノメノカミ)とは水の神である。

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戸出喜信「黒部川

宇奈月神社の隣には、セレネ美術館がある。平山郁夫、塩出英雄、福井爽人など黒部峡谷の風景を描いた7人の日本画家の作品が常設展示されている。撮影は不可だが、宇奈月町出身でフランス在住の洋画家・戸出喜信が描いた大作「黒部川」だけが撮影可であった。他に黒部川電気記念館で、黒部川電源開発の歴史を追体験して、10月中旬の黒部立山アルペンルート宇奈月黒部峡谷を巡る旅を終えた。

 

 

欅平

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出し平ダム

黒薙駅を出発してまもなく、右手に出し平ダムが見えてくる。暴れ川とも呼ばれる黒部川では、大量の土砂が流出する。そのため出し平ダムでは排砂ゲートを2ヶ所所有し、堆積した土砂を流下させることができる構造にしている。

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冬季歩道

出平駅周辺の線路脇にこじんまりしたトンネルが続き、時折空気穴が空いている。人一人がやっと通れる冬季歩道というトンネルで、宇奈月駅から終点の欅平駅まで、雪深い冬季休業中に、黒部峡谷のダムで働く勤務員たちに荷物を届けるために「逓送さん」が歩くトンネルである。

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出し六峰

出平駅の右手には出し平ダム湖があり、そのさきに険しい山並みが見える。6つの峰がそそり立ち、出し六峰と呼ばれる。

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釣鐘駅

峡谷トロッコからは猫又駅近くで鼠返しの岸壁をやり過ごし、釣鐘駅に着く。駅のすぐ先、左手から細い沢が流れ落ちたところが、夏でも万年雪が見える場所だが、10月半ばでは残っていない。

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欅平、奥鐘橋

ようやく黒部峡谷鉄道の終点である欅平駅に着くと、早速、散策する。上流に向かうとすぐ高さ34mの奥鐘橋がある。右手が黒部ダムから流れ下ってきた黒部川の上流で、橋の先には人喰岩があり、その左手下には祖母谷川が流れている。

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黒部川

奥鐘橋の上から右手を眺めると黒部川の上流に新黒部川第三発電所が見える。左手に聳える断崖が、黒部三大岸壁の奥鐘山西壁がある奥鐘山の麓であり、上流の奥には黒部ダムがあって上級者でも歩くと2日ほどかかる。

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リンドウ

橋を渡ったところにリンドウの花が咲いていた。姿がよく似ているリンドウ、エゾリンドウ、オヤマリンドウの3種は日本特産種で、それぞれ関東以西、近畿以北、中部地方以北が自生地なのだが、欅平は標高約600mなので、この花は低山にも咲くリンドウ(Gentiana scabra var. buergeri)と思われる。

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人喰岩

巨大な岸壁をくりぬいてできたオーバーハングの道は人喰岩と呼ばれる。人喰岩の先へ20分ほど歩くと、岩の露天風呂がある名剣温泉に着く。さらに40分ほど進むと白馬岳・唐松岳の登山口でもある祖母谷温泉(山小屋)に至る。

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人喰岩から奥鐘橋

人喰岩から奥鐘橋と欅平駅を振り返る。オーバーハングの天井岩に生えた草木を下から眺めるのは不思議な体験だ。一般旅客営業は欅平駅が終点だが、「関西電力黒部専用鉄道」として軌道は先へ続いている。トンネルを500mほど進んでスイッチバックしたところにこの駅の構内扱いの通称欅平下部駅がある。そこから高低差約200mの竪坑エレベーターにより上部軌道の欅平上部駅とを結び、「上部軌道」の小型トロッコを介して黒部川第四発電所に至る。そこからインクラインと黒部トンネル専用バスを利用して黒部ダムに至る「黒部ルート見学会」が公募されている。

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河原展望台と欅平温泉

人喰岩から下流を眺めると、右下の祖母谷川に左から黒部川が合流するところに河原展望台と奥に欅平温泉(猿飛山荘)が見える。展望台へは欅平駅からジグザグの階段を7分ほど下る。展望台には足湯もある。

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欅平温泉(猿飛山荘)

昼食は欅平駅のすぐ下の欅平温泉(猿飛山荘)で、渓流を眺めながら露天風呂を日帰りで満喫した後、山菜とおでんとビールで軽く済ませた。

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点検用トンネル

駅に戻る途中、暗いトンネルを見つけた。入口横にある入所者一覧表の札を返して、軽トラックが入って行った。何らかの点検用トンネルと思われる。

 

黒薙温泉

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黒薙温泉、大露天風呂

黒薙温泉は、黒部峡谷最古の露天風呂で、源泉は毎分2,000リットルの湧出量を誇り、宇奈月温泉の源泉でもある。黒薙川沿いの混浴大露天風呂は、広さ28畳敷相当あり、女性専用時間も設けられている。

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天女の湯

旅館下流側にある「天女の湯」は女性専用だが、一部男性専用時間も設けられている。高台の露天風呂から吊り橋と峡谷を湯煙とともに眺められる。

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宇奈月ビール

木造二階建ての旅館は、毎年4月下旬から11月下旬までの営業で、冬季は閉館となる。黒部峡谷の秘境で飲む酒は感無量である。立山の雪解け水が流れ込む黒部川の名水と黒部産二条麦を使用して、地元黒部市で作られる「宇奈月ビール」は、濾過で酵母の量を調節して残し、ビール本来の美味しさを追求している。3種類あり、「十字峡」は、ドイツ・ケルン地方に伝わる泡色麦芽を使用したケルシュスタイルのビール。「カモシカ」は、ドイツ・ババリア地方で作られるラガービールで、ロースト麦芽の香ばしい風味が口当たり良い。「トロッコ」は、ドイツ・デュッセルドルフのアルトスタイルのビール。カラメル麦芽の香ばしさが特徴の美しい琥珀色のビールである。

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クサボタン

花弁が反り返っているような風変わりな形の花を咲かせているのは、キンポウゲ科センニンソウ属のクサボタン(Clematis stans)。普通、茎は直立し高さ1mになり、冬には茎の基部が木質化するため、半低木とされる。北海道西南部から本州の山地の林縁や草原に自生する日本固有種で、有毒植物である。淡紫色の花の花弁に見えるのは萼片で、花弁はない。

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ノコンギク

こちらのいわゆる野菊は、ヨメナ属のヨメナに似ているが、シオン属のノコンギクAster ageratoides var. ovatus)であろう。野菊はどの花も葉もよく似ていて、花を分解したり、葉がざらついているかを調べないと確定し難いので、いつも悩む。ノコンギクは、本州、四国、九州の野山に普通に生える多年草で、葉の両面に毛がありザラザラしている。

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ヤマハッカ

こちらの青紫色の花は、シソ科ヤマハッカ属のヤマハッカ(Isodon inflexus)という多年草。日本を含む東アジアに広く分布し、山地の林縁や草原に自生する。花冠は4裂し、濃青紫色の斑点が目立つ。

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リュウノウギク

こちらの白い菊は、日本固有種のリュウノウギク(Chrysanthemum japonicum)。福島県新潟県以南の本州、四国、九州の山地や丘陵に自生する多年草。和名の竜脳菊は、茎や葉の香りが、中国から伝わった竜脳(リュウノウジュから採れる精油)という香料に似ていることに由来するが、実際には樟脳の香りに近い。葉は卵形で中3裂し、裏面は灰白色を帯びる。花期は1011月。茎の先端につく白い花は1〜2個。舌状花の先端がこの花のように稀に切れ込む(歯)。

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アキギリ

こちらの赤紫色の花は、シソ科アキギリ属のアキギリ(Salvia glabrescens)という。本州中部地方から近畿地方の主に日本海側の山地に生える多年草である。アキギリ属の学名はSalviaで、観賞用のサルビア、薬や香辛料のセージと同じ属に含まれ、世界に約900種が知られる。

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薬師堂

黒薙温泉の入り口手前に薬師堂が建っている。堂内に安置されている薬師如来像は、行基菩薩が彫ったとの言い伝えがあるという。略縁起によると、音沢村の太郎左衛門が所蔵していた薬師如来像を連れて、仏のお告げに従いこの山奥の黒薙にたどり着くと、霊泉が湧き出ていたという。

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トンネル跡

帰りもまずは石段を登るところから始まる。その登り口に小さなトンネル跡があった。黒薙駅から黒薙第二発電所方面に伸びる線路に結ばれていた黒薙支線で、昔は黒薙温泉に荷物を運んでいたという。以前は駅員に許可を得れば通行できたそうだが、今は保安上の問題から通行止めになっていて、扉が閉められている。

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ツルアリドオシの実

石段を登りきると平坦な道になる。山道の足元に小さな赤い実を見つけた。アカネ科ツルアリドオシ属のツルアリドオシ(Mitchella undulata)という常緑つる性の多年草。和名は、葉や花などがアリドオシに似ることに由来する。日本各地の山地帯から亜高山帯のやや湿った林縁などに生える。6〜7月、枝先に萼筒が合着した2個の白い花を咲かす。果実は2個の子房が合着して一つの実になるが、2個の花の萼の跡が残る。

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黒薙第二発電所に通じる線路

帰りも20分ほどで黒薙駅に着く。黒薙駅から後曳橋を渡って欅平へ向かう線路とは別に、左手に分岐する線路とトンネルがある。これが関西電力の黒薙第二発電所に通じる線路で、今も使われているため、トンネル内は点灯されている。先ほどの黒薙温泉へは途中で分岐する。

 

黒薙温泉へ

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新山彦橋から山彦橋を見る

黒部峡谷鉄道の最終列車は、宇奈月駅を出発するとまもなく、黒部川に架かる新山彦橋を渡る。高さ40m、長さ166m、傾斜のついた珍しい橋である。左手すぐ下流には山彦橋が架かっていて、山彦遊歩道を散策する観光客が手を振っている。

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うなづき湖と湖面橋

トンネルを抜けると今度は右手に、宇奈月ダムによってできたうなづき湖と赤い湖面橋が見える。

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新柳河原発電所

湖岸に建つ西洋の城のような建物は、新柳河原発電所である。宇奈月ダムの建設で水没した柳河原発電所の代わりに建設された。

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黒薙駅と後曳橋

宇奈月から20分ほどで黒薙駅に着く。トンネル前の青い橋は高さ60mの後曳橋。沿線で最も急峻な谷に架かる橋である。

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黒薙温泉に向かう急な石段

ロッコ電車が出発するのを待って、線路に降りて渡り、黒薙温泉に向かう急な石段を上がっていく。徒歩で約20分。黒部峡谷のトロッコ電車でしか辿り着けない秘境の一軒宿に向かう。

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アキノキリンソウ

急な石段を上りきるとほとんど平坦な山道が続く。道端に咲く黄色い花は、アキノキリンソウSolidago virgaurea var. asiatica)である。日本各地の山地に最も普通に見られる、秋に咲く黄金色の花の代表種である。若葉は食用でき、茹でて水に晒した後、和物やおひたしにする。

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発電用送水路

山道を進むと眼下の黒薙川の渓谷に大きな送水管が架かっているのが見える。出し平ダムからの発電用送水路である。

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コンクリート製の水路橋

後ろを振り返ると青い後曳橋の手前にコンクリート製の古めかしい橋が見える。昭和2年に新柳河原発電所へ送水するために設けられた水路橋である。黒薙側から高さ50mの位置に架けられている。長さ48m、幅10mの巨大なアーチ橋は当時の最大スパンの橋梁で、技術水準の高さが感じられる。

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ダイモンジソウ

右側の渓谷に対し、左側は岩山で水気が多く、苔の間から白い花がいくつも咲いている。ユキノシタ属のダイモンジソウ(Saxifraga fortunei var. incisolobata)という多年草である。和名は花が「大」の字に似ることによる。日本各地の山地帯から高山帯に広く分布し、葉の形や切れ込みの度合いなど変異の幅が広い。

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シロカイメンタケ

道端の大木に大きなキノコが張り出していた。サルノコシカケ科のシロカイメンタケ(Piptoporus soloniensis)という大型のキノコである。幼菌の時は赤褐色が強く、成熟するにつれて白色となる。

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黒薙温泉手前の連滝

山道も最後は急に下っていき、右手に細い連滝が見えると黒薙温泉に着く。

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黒薙温泉

細い連滝に向かい合って建つ黒薙温泉は、江戸時代の初期、正保2年(1645)に近在の村人により発見され、慶応4年(1868加賀藩に開湯を許可されるまで220年有余、深山幽谷の「隠れ湯」だった。大正中頃に電源開発用の鉄道敷設によりようやく一般に利用され始め、多くの文人墨客が訪れ幾多の詩歌を残している。

 

立山から宇奈月へ

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劔岳と劔御前

室堂ターミナルから立山黒部アルペンルートの西側部分、立山駅へと向かう。はじめは立山高原バスで天狗平、弥陀ヶ原を通り、美女平まで約1,500mの標高差を下る。室堂を出発してまもなく、天狗平を過ぎた辺りで、劔御前(2,776m)の後ろに隠れていた劔岳2,999m)が姿を表す。

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劔岳

劔岳は、日本国内の登山では最も危険度の高い山とされるので、素人には縁がないとしても、どんな山か見ることができて幸いである。

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頭だけの立山三山

弥陀ヶ原に近づく頃には周りの雪もほとんどなくなり、立山三山も頭だけ見えるに過ぎなくなる。

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弥陀ヶ原と鍬崎山

弥陀ヶ原は標高1,600mから2,000m、東西4km、南北2kmに広がる火砕流台地である。餓鬼の田(池塘)が数多くあり、ラムサール条約にも登録された貴重な高原湿地である。夏には湿地を好む高山植物が咲き乱れるお花畑もある。谷を隔てて向こうに見える山は鍬崎山(2,062m)であろう。

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薬師岳

弥陀ヶ原からなおも下っていくと、左手後方(南)に雪をかぶった高い山、薬師岳2,926m)が見えてくる。昔、越中立山というと、北の毛勝三山から南の薬師岳辺りまでを指したという。今では北アルプス中央部の鎮めとして人気があり、雲ノ平や黒部五郎岳とともに黒部源流の山と位置付けられている。立山と同様、古くから山岳信仰の山で、平家落人伝説のあった有峰の人々が薬師如来の山として山頂に小さな祠を建て、毎年の祭には登拝して剣を奉納していたという。

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ナナカマドの紅葉

落差350mと日本一ともいわれる四段構成の称名滝を過ぎる辺りから、ようやく赤や黄色に染まる紅葉が見られるようになる。モミジは少なく、赤い葉はナナカマドの紅葉である。

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立山地ビール「星の空」

美女平駅から立山ケーブルカーに乗って立山駅に着いてアルペンルート は終わる。そこから富山鉄道に乗り換えて宇奈月へと向かう。早速、立山駅で買い求めた立山地ビールを味わう。立山アルペンルート(黒部湖〜立山駅)で2018年から売り出された「星の空」は、立山の主峰・雄山の名水「立山玉殿の湧水」で仕込み、缶内で自然発酵させたクラフトビール。青色缶はフルーティでまろやかなオリジナルビール、黒色缶は香ばしい苦味が特徴の黒ビール。濾過せず残ったビール酵母がビール本来の旨味を引き出しているという。どちらも味わい深く美味しい。

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寺田駅

立山駅から宇奈月温泉駅まで2時間ほどかかる。途中の寺田駅で乗換えが必要だが、30分も待ち合わせた。辺りは田畑が広がり、彼方には北アルプスの山並みが見える。

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黒部峡谷鉄道宇奈月駅

富山地方鉄道宇奈月温泉駅から黒部峡谷鉄道宇奈月駅まで300mほど歩く。いよいよトロッコ電車に乗るが、普通の電車よりひと回りもふた回りも小さくて可愛い電車だ。このトロッコを見ると、7年前の夏に来たのを思い出す。

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ロッコ電車

ロッコ電車の客車にはいくつもの種類があり、運賃や料金にも違いがある。手前のオープン型普通車両が最も安く、窓もドアもなく、鎖を外して乗り込むが、秋も深まるとかなり寒い。他は全て窓付きの密閉型客車(ボギー車両)で、特別客車とリラックス客車がある。右奥がリラックス客車で、距離に関係なく車両券の購入が必要である。午後3時近くの最終列車だったので、リラックス車両に乗り込んだ。