半坪ビオトープの日記

黒薙温泉へ

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新山彦橋から山彦橋を見る

黒部峡谷鉄道の最終列車は、宇奈月駅を出発するとまもなく、黒部川に架かる新山彦橋を渡る。高さ40m、長さ166m、傾斜のついた珍しい橋である。左手すぐ下流には山彦橋が架かっていて、山彦遊歩道を散策する観光客が手を振っている。

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うなづき湖と湖面橋

トンネルを抜けると今度は右手に、宇奈月ダムによってできたうなづき湖と赤い湖面橋が見える。

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新柳河原発電所

湖岸に建つ西洋の城のような建物は、新柳河原発電所である。宇奈月ダムの建設で水没した柳河原発電所の代わりに建設された。

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黒薙駅と後曳橋

宇奈月から20分ほどで黒薙駅に着く。トンネル前の青い橋は高さ60mの後曳橋。沿線で最も急峻な谷に架かる橋である。

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黒薙温泉に向かう急な石段

ロッコ電車が出発するのを待って、線路に降りて渡り、黒薙温泉に向かう急な石段を上がっていく。徒歩で約20分。黒部峡谷のトロッコ電車でしか辿り着けない秘境の一軒宿に向かう。

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アキノキリンソウ

急な石段を上りきるとほとんど平坦な山道が続く。道端に咲く黄色い花は、アキノキリンソウSolidago virgaurea var. asiatica)である。日本各地の山地に最も普通に見られる、秋に咲く黄金色の花の代表種である。若葉は食用でき、茹でて水に晒した後、和物やおひたしにする。

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発電用送水路

山道を進むと眼下の黒薙川の渓谷に大きな送水管が架かっているのが見える。出し平ダムからの発電用送水路である。

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コンクリート製の水路橋

後ろを振り返ると青い後曳橋の手前にコンクリート製の古めかしい橋が見える。昭和2年に新柳河原発電所へ送水するために設けられた水路橋である。黒薙側から高さ50mの位置に架けられている。長さ48m、幅10mの巨大なアーチ橋は当時の最大スパンの橋梁で、技術水準の高さが感じられる。

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ダイモンジソウ

右側の渓谷に対し、左側は岩山で水気が多く、苔の間から白い花がいくつも咲いている。ユキノシタ属のダイモンジソウ(Saxifraga fortunei var. incisolobata)という多年草である。和名は花が「大」の字に似ることによる。日本各地の山地帯から高山帯に広く分布し、葉の形や切れ込みの度合いなど変異の幅が広い。

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シロカイメンタケ

道端の大木に大きなキノコが張り出していた。サルノコシカケ科のシロカイメンタケ(Piptoporus soloniensis)という大型のキノコである。幼菌の時は赤褐色が強く、成熟するにつれて白色となる。

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黒薙温泉手前の連滝

山道も最後は急に下っていき、右手に細い連滝が見えると黒薙温泉に着く。

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黒薙温泉

細い連滝に向かい合って建つ黒薙温泉は、江戸時代の初期、正保2年(1645)に近在の村人により発見され、慶応4年(1868加賀藩に開湯を許可されるまで220年有余、深山幽谷の「隠れ湯」だった。大正中頃に電源開発用の鉄道敷設によりようやく一般に利用され始め、多くの文人墨客が訪れ幾多の詩歌を残している。