半坪ビオトープの日記

湯の丸高原、池の平湿原

湯の丸高原
一昨日、久しぶりに、湯の丸高原と池の平湿原を散策してきた。湯の丸高原浅間連峰の西側に位置し、標高18002000mの高原地帯である。その名の通り丸く穏やかな山容を見せている湯ノ丸山2101m)の山肌にも、6月下旬にはレンゲツツジの朱色の群落が認められる。

ツツジ平のレンゲツツジ
湯ノ丸山の東麓には、国の天然記念物にも指定されている、約60万株のレンゲツツジRhododendron japonicum)の大群落があり、第一リフトの北に広がるツツジ平では、鮮やかに咲くレンゲツツジを間近に見ることができる。第一リフト周辺では、放牧されている牛がのんびり草を食べている様子も眺められる。

池の平湿原のアヤメ
湯の丸高原と高峰高原の間にある池の平湿原は、標高2000m前後。数十万年前の三方ヶ峰火山の火口原に広がる高層湿原で、高山植物の宝庫といわれる湿原をめぐるハイキングコースが整備されている。池の平湿原を巡る自然探勝路を反時計回りに西に向かって歩き始めるとまもなく、鮮やかな紫色のアヤメ(Iris sanguinea)が咲いていた。日本全国の山野に生える多年草で、和名の文目は、外花被の基部に綾になった目があることが由来とされる。

見晴歩道のレンゲツツジ
村界の丘(2113m)、雷の丘(2108m)、雲上の丘(2110m)と外輪山の樹林の中の見晴歩道を進むと、開けた草原にレンゲツツジが燃えるように鮮やかに咲き誇っていた。

ハクサンフウロ
雲上の丘近くで見かけたこの花は、ハクサンフウロGeranium yesoense var. nipponicum)。本州中部以北の亜高山帯から高山帯の草地に生える多年草で、葉は掌状に深く5裂し、さらに中裂する。

池の平湿原の全景
雲上の丘から東の眼下に、池の平湿原の全景を見渡すことができる。一番右手(南)には鏡池2010m)があり、湿原をめぐる木道の一番向こうの切れた所が、外輪山が決壊した放開口である。池の平という名からは、かつてはいくつもあったと推定される池塘も今は鏡池だけになるほど、湿原は乾燥が進み笹が生い茂る野原へと変貌しつつある。

イワカガミ
こちらの淡紅色の花は、イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)という常緑多年草。日本全国の高山や深山の草地、岩場に群生する。和名は岩鏡で、岩場に多く咲き、葉に光沢があることに由来。漏斗型の花冠は5裂し、先端はさらに細裂する。

見晴岳近くのコマクサ
見晴岳(2095m)から戻ってすぐのガレ場に、可憐な姿のコマクサ(Dicentra peregrina)が咲いていた。北海道と本州中部地方以北の高山の砂礫地に生える多年草。花弁は4個で外側と内側に2個ずつ付く。外側の花弁は下部が膨らみ先がそり返る。

ハクサンシャクナゲ
池の平湿原を垣間見ながら三方ヶ峰に向かうと、大きな石楠花の株を見つけた。花冠の内側がわずかに淡紅色を帯びるがほとんど白色なので、ハクサンシャクナゲRhododendron brachycarpum)である。四国の石鎚山、北海道と本州中部地方以北の亜高山帯からハイマツ帯に分布する。

三方ヶ峰手前のコマクサ
三方ヶ峰(2040m)の手前のガレ場にもコマクサの自生地がある。コマクサは「高山植物の女王」と称され人気のある花だが、他の植物が生えないような過酷な条件の砂礫地を好んで生える孤高の花である。砂礫の下に根を長く伸ばしているという。コマクサの和名、駒草は、蕾を横から見たときに馬の横顔に見えることに由来するそうだ。

ハクサンチドリ
三方ヶ峰から湿原に下ったところで、紫色の鮮やかなハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)が咲いていた。北海道および本州中部地方以北の高山帯の湿り気のある場所に生える。茎先に総状花序の赤紫色の花を多数つける。花冠は唇形で、先端が3裂している。和名は白山に多く、千鳥の飛ぶ姿に似ることに由来する。

池の平湿原の鏡池
ようやく池の平湿原に降りたち、すぐ左手に鏡池を見に進む。鏡池は、浅間連峰の西にある、浅間山に一番近い天空の池(池塘)である。先ほど見下ろした雲上の丘の斜面は、カラマツなどの林と草原が広がっている。あちこちにレンゲツツジの朱色の株も認められる。

池の平湿原
池の平湿原から放開口方面を眺めると真っ平の火口原は乾燥が進み、いくつか高山植物が生えているとはいうものの全体として背の低い笹原に覆われている。久しぶりにコマクサなどの高山植物を鑑賞できて満足した。