半坪ビオトープの日記

裏磐梯、中瀬沼・レンゲ沼探勝路

裏磐梯、曽原湖
雄国沼の散策の後は裏磐梯高原で泊まり、翌日はいくつかの湖沼を散策して回った。裏磐梯で最大の桧原湖の東に、曽原湖がある。一応曽原湖畔探勝路が設けられているのだが、湖畔は別荘地として販売されているためかほとんど沼に沿って歩くことはできないので、歩くのはやめた。

曲沢沼
曽原湖のさらに東側に大沢沼と曲沢沼がある。磐梯山の噴火でできた典型的な沼で、最近ではカメラマンの穴場的な撮影スポットとして人気がある。特に秋は沼に映り込む紅葉が万華鏡のように美しい。手前の大沢沼は木立に邪魔されて見づらいが、森に包まれている分、水鏡に巡り合う確率が高いという。こちらの曲沢沼の方が有名だが、どちらも駐車スペースがないのが玉に瑕。10月下旬が見頃というのでいつかまた来たい。

ヤグルマソウ
桧原湖の東、曽原湖の南に中瀬沼探勝路がある。中瀬沼展望台を通り、レンゲ沼や姫沼を回ることができる。展望台に向かって歩き始めてすぐに、大きな葉と賑やかな円錐花序が目立つヤグルマソウの群落に出会った。ヤグルマソウRodgersia podophylla)は、北海道西南部と本州の湿り気のある深山に生育する多年草で、花弁はなく、花弁に見える萼裂片ははじめ緑白色でのちに白色に変わる。和名の由来は、小葉の構成が端午の節句の鯉のぼりに添える「矢車」に似ることによる。日本各地の方言が多くある。イツツバ(木曽)、エクへー(安芸)、コノテ(秋田)、ゴハ(秩父、北佐久、美濃)、サルカサ(秋田、長野)など。

ケナシヤブデマリ
こちらの白い装飾花が目立つ花は、よく見かけるムシカリ(オオカメノキ)ではなく、ヤブデマリの地域変種、ケナシヤブデマリ(Viburnum plicatum var. glabrum)という落葉小高木である。ムシカリ(オオカメノキ)の装飾花が5枚はっきり認められるのに対し、ケナシヤブデマリでは5枚のうち1枚が極めて小さく4枚に見える。ヤブデマリは関東以西の本州、四国、九州に生育するが、ケナシヤブデマリは北陸から東北地方の日本海側に生育する。葉脈の幅がムシカリの葉よりケナシヤブデマリの葉の方が並行である。

サイハイラン
こちらの花は、一見するとショウジョウバカマに似ているが、サイハイラン(Cremastra appendiculata)というラン科の多年草である。日本各地の山地の木陰に生育するが、初めて見つけた。花期は5〜6月。長さ1535cmになる大きな葉を普通1枚つける。40cmほどの花茎に淡紫褐色の花を1020個密につけ、片方に偏り下向きに咲く。和名の采配蘭は、昔戦場で指揮をとるのに使った采配に見立ててつけられた。

ノアザミ
こちらのアザミは、ノアザミCircium japonicum)という多年草。本州以南の山野に最も普通に見られる、日本固有種。頭花は紅紫色、枝の先端に直立してつく。春先に咲くアザミはオニアザミノアザミがほとんどなのでわかりやすい。若い茎は山菜として食用になり、天ぷらや油炒め、煮物に調理される。根の乾燥品は大薊と呼ばれる生薬となる。

中瀬沼展望台
15分ほど歩くと中瀬沼展望台に着く。明治21年(1888)7月に起こった水蒸気爆発により、磐梯山1816m)のすぐ北側にあった小磐梯(約1750m)が大規模な山体崩壊・岩なだれを起こし、477名の命が奪われた。明治以降最大の火山災害である。この噴火によって磐梯山の北側では、岩なだれが川を堰き止め、桧原湖などの湖をつくった。流れ山の窪地には水が溜まり、五色沼湖沼群や中瀬沼などの変化に富んだ湖沼が生まれた。複雑に入り組んだ中瀬沼は、数百年で緑深い森を形成した。この展望台も流れ山の一つである。

ホタルカズラ
探勝路はレンゲ沼に向かって少しずつ下っていく。この青紫色の花は、ホタルカズラBuglossoides zollingeri)というムラサキ科イヌムラサキ属の多年草。日本全土の山野に生え、花期は4〜5月。和名は蛍蔓の意味で、花色を蛍の光にたとえたもの。別名に、ホタルソウ、ホタルカラクサ、ルリソウなどがある。

小沼
レンゲ沼の手前に、小さな小沼があった。ジュンサイだろうかヒシだろうか、沼一面に浮葉植物が繁茂している。

マルバノイチヤクソウ
森の下草の間に見慣れない花が咲いていた。マルバノイチヤクソウ(Pyrola nephrophylla)という常緑の多年草。日本各地の山地帯〜亜高山帯の林床や林縁に生える。花茎はやや赤みを帯び、先に5〜10個の花を下向きにつける。花冠はやや赤みを帯びた白色。

サワオグルマ
こちらの沼地に咲いていた黄色い花は、キオン属のサワオグルマ(Senecio pierotii)という多年草。本州以南の湿り気のある湿原などに生育し、花は舌状花と筒状花で構成されるキク科の特徴を持つ。花期は4〜6月。花は数個から30個程度つける。

レンゲ沼
いよいよレンゲ沼に着いた。ここには裏磐梯サイトステーションがあり、ここで色々と情報を得てからトレッキングするのがよい。

レンゲ沼
レンゲ沼だけ一周だと20分ほどで回れる。浮いている草は、ジュンサイヒツジグサである。

アヤメ
次に姫沼に向かう。美しい姿をひけらかすように咲く花は、アヤメ(Iris sanguinea)という多年草である。北海道から九州までの山野に自生し、ノハナショウブカキツバタのように湿地に生えることは稀で、主に比較的乾燥している草地を好む。花形は主に三英花(外側の大きな花弁が3枚)で、花弁の付け根には黄色と紫色の虎斑模様がある。この網目模様が文目(あやめ)の名の由来という。カキツバタハナショウブにはこの網目模様はない。ヒオウギアヤメには網目模様があるが、アヤメの内花被片が大きく立ち上がるのに対し、ヒオウギアヤメでは小さく目立たない。

姫沼
最後に姫沼に着く。この沼も深い緑に包まれているが、姫沼というほど小さくは感じられない。その後、中瀬沼展望台へと続く道に合流するので、右の展望台へは行かずに、左に折れて出発点に戻る。5月初旬には少しだがミズバショウが見られる。50分ほどで一周できた中瀬沼探勝路だが、植物の種類も多く、変化に富んだ格好な散歩道であった。