10月中旬に黒部ダムから立山、宇奈月から黒部峡谷を、数人連れ立って訪ねた。扇沢から立山駅までの立山黒部アルペンルート切符を買い、まずは扇沢で黒部ダム行きの電気バスに乗る。
黒部ダム駅から220段の階段を上ると標高1,508mの展望台があり、黒部ダムと黒部湖が一望できる。観光放水は終わっていたが、運よく工事用の臨時放水を見ることができた。天気が良ければ西には立山連峰、南には赤牛岳が見えるのだが、小雨降る中では霞んで見えない。
黒部ダムの堰堤の高さは186mで日本一、長さは492mある。観光放水の量は毎秒10t以上、ダムの総貯水量は約2億㎥以上である。
ダム展望台からは外階段を下る。途中、コンクリートバケットと滑車が展示されている。1956年(昭和31)から7年かけて建設された黒四ダムの堰堤を造るためのコンクリートを運んだ道具である。
展望台の向かいには立山から流れ下る急峻な御前谷が見えるが、さらに右手の黒部川の峡谷は鬱蒼と茂る原始林に遮られて水の流れが辿れない。
新展望広場のレインボーテラスまで下れば、迫力満点の放水を間近に体感できるが、放水観覧ステージで左に折れて昼食のためにレストハウスに向かう。
混雑の中、ようやく注文できた名物のダムカレーは、アーチ型のご飯の堰堤の手前にカレールーの黒部湖、ヒレカツは遊覧船ガルベ、ポテトサラダは放水をイメージしたという。
黒部湖や対岸の紅葉を見ながら長い堰堤を進むとトンネルに入る。その中に黒部平に向かうケーブルカーの駅がある。駅の手前を左に折れると黒部湖遊覧船乗り場に向かう。
この辺りがちょうど紅葉の真っ最中なのだろうが、赤く紅葉するモミジの仲間はあまり多くないようだ。崖の上部にはダム堰堤工事の際に設けられた巨大な架台が残されている。
遊覧船乗り場の先には湖畔遊歩道があり、カンパ谷の吊り橋を渡ると、ブナやダケカンバの原生林の中を進み、ロッジくろよん前で折り返せば約1時間散策できる。
遊覧船ガルべの乗り場は急な階段をかなり下る。満水時の湖面は標高1,448mで、遊覧船としては日本最高所。周遊は約30分。
ガルべとは、黒部の語源といわれるアイヌ語を元にした名前で、平成12年新造船の際に命名された。晴れていればエメラルドグリーンに輝く湖面から一望する黒部峡谷や、西に聳える立山連峰、東に構える針ノ木岳やスバリ岳、正面の南には赤牛岳を望めるのだが、どんより曇っていて湖畔の紅葉しか見えないのが残念である。
遊覧船乗り場からケーブルカーの駅に戻る途中、対岸に雲の間から雪の積もった山々が見えた。針ノ木岳だろうか、赤沢岳だろうか、周りが見えないので断定できない。