半坪ビオトープの日記

黒薙から鐘釣へ


黒部峡谷ロッコ電車も森石駅を過ぎるとだんだん谷が深くなり、カーブも多くなって深山の峡谷らしくなる。黒薙駅のすぐ先の後曳橋は、隣に見える水路橋とともに人を寄せ付けない深く険しい谷に架かり、スリリングな景観は圧巻である。宇奈月温泉の源泉であり、峡谷最古の温泉でもある黒薙温泉はこの谷の奥にある。

峡谷を縫うように走るトロッコ電車の右手に見えてきたダムは、出し平ダムである。重力式コンクリートダムだが、日本で初めて排砂ゲートを装備したことで知られる。下流宇奈月ダムと連携し、黒部川に溜まった土砂を排砂するが、富山湾にヘドロを排出することが漁業者の間で問題となっている。

出し平ダム湖の対岸に聳え立つのは「出六峰(だしろっぽう)」という。六つの峰が競い立ち、垂直の崖がダム湖に落ち込むのだが、ロックシェードや木立に遮られて大きな姿は捉え難い。

猫又駅の対岸には、黒部川第二発電所がある。その右手の大きな崖は「ねずみ返しの岩壁」という。高さ200mの花崗岩の大岩壁で、猫に追われたねずみが引き返したのでこう呼ばれるようになったといい、追ってきた猫も引き返したのでこの地を猫又というそうだ。

猫又駅を過ぎると黒部川の速い流れが間近に迫っていて、峡谷の先には折り重なる山々が見える。この辺りは、錦繍関とも呼ばれる紅葉の名所である。

お寺の鐘を伏せたような山は、東鐘釣山(759m)である。全山が晶質石灰岩の岩山で、鋭く尖った山が多い黒部峡谷では丸く優しい姿が異彩を放っている。

東鐘釣山のトンネルを抜けると、鐘釣橋を渡りながら黒部川峡谷の上を横切る。

鐘釣駅には、鐘釣温泉河原露天風呂、黒部万年雪、鐘釣三尊像など見どころがいくつもあるので、途中下車する人も多い。

黒部川の対岸にある黒部万年雪は、百貫山(1,969m)に降った雪が雪崩によって谷に堆積し、雪の固まりになって次の冬まで解けずに残っている。

鐘釣駅を過ぎると右手から勢いよく渓流の水が迸ってくる。サンナビキ山(1,949m)の山腹から清水が集まっている。サンナビキ山は、周囲の山より早く冠雪することから「さきがけ山」とも呼ばれ、紅葉期には五段染めとなることで知られる。