最後の日、若者で賑わうサイアム・スクエアの近く、バンコク芸術文化センターBACCの裏手にある、ジム・トンプソン・ハウスに行った。タイシルク王として名高いアメリカ人、ジム・トンプソン氏が1959年から8年間暮らしていた住居が博物館として公開されている。家の見学はガイドツアーのみ可能で、日本語ツアーもあるので時間を合わせたい。
ジム・トンプソン氏は、第二次世界大戦中にタイに派遣され、終戦後も残ってタイシルクの事業化に貢献し、バンコク、パタヤ、プーケットなどに多数の店舗を展開し、財を成した。チーク材を用いたタイの伝統的な建築や古美術コレクションの見学、緑や花々が美しい庭の散策など、都会のオアシス空間としても人気が高い。
この赤い花は、レッドジンジャー(red ginger)と通称されるアルピニア(ハナミョウガ)属のプルプラタ(Alpinia purpurata)。高さ4m、葉の長さ70cmになる東南アジア原産の大型種で、花は小さな白色だが、花序は長く穂状で苞が赤いため、花序全体が赤く見えて美しい。
現在タイ国内には10万戸以上の養蚕農家があり、年間600トン以上のシルク繭が生産されている。そのうち500トン近くを使って国内のシルク布生産が行われている。世界中にオンラインショッピングを展開し、タイやシンガポール、ミャンマーに25店舗の直営店を持つ。
かつては建築家を目指していたというジム・トンプソンは、チーク材を始め、アユタヤなどの田舎で廃墟となっていた家を解体して手に入れた資材で家を作った。その家は6棟からなり、客間や寝室、ダイニング、書斎などが見学できる。
格調高いシャンデリアやアンティークな調度品など、東南アジア各地から収集した古美術の彫刻や陶磁器などが数多く展示されている。
ジム・トンプソンは東南アジア各地で収集活動を行なっていたが、1967年、休暇で訪れたマレーシアのキャメロンハイランド高原で、忽然と姿を消すという謎の失踪事件に巻き込まれた。地元の警察や軍の捜索も実らず、今だに遺留品一つ発見されていない。
この黄金色の仏像も見たことがないような形をしている。下半身の衣が燃え立つような独特の意匠である。
タイ北部のタイプアン族には、代々伝わるシュエチドウ(shwe chi doe )というテキスタイルの織物の習慣があり、ここにもいくつか展示されている。この作品は、ブッダの生活から題材をとっているとされる。
タイでは寺院の扉などにチーク材の彫刻が施された例が多く見かけられ、ここにもいくつか集められている。
庭に咲いていたこの花は、クサギ属のベニゲンペイカズラ(Clerodendrum × speciosum)という園芸品種。ゲンペイクサギ(C. thomsoniae)とスプレンデンス(C. splendens)の交配種。スプレンデンスの深紅色とゲンペイクサギの紅白の花冠の色が交錯して多彩な花模様となる。
敷地の右側にはジム・トンプソンが暮らしていた住居があるが、左手にはシルク製品のショップやレストランが建っている。
出入口脇にはヒンドゥーの祠があり、綺麗な花飾りが供えられている。ヒンドゥーの神ブラフマー(梵天)を祀っていると思われる。オレンジ色の花飾りは伝統的なマリーゴールドの花飾りである。