初日も二日目も雨なのでマングローブカヌーの予定を変更し、奄美市の大浜海浜公園と奄美海洋展示館に行く。大浜海浜公園は名瀬中心部から最も近く、名瀬随一の海水浴場としてよく整備され、発達したサンゴ礁でのシュノーケリングやダイビングにも人気がある。ウミガメの産卵スポットや夕日の名所としても知られている。
大浜海浜公園にはアダン、アレカヤシ、ソテツ、扇芭蕉やガジュマルなど、亜熱帯性の植物が多く植えられている。大きなガジュマルの幹は多数に枝分かれし、気根も多く垂れ下がって幹と見間違うほど太いものもある。奄美ではガジュマルにはケンムンという妖精が住むといわれる。
大浜海浜公園の西側には奄美海洋展示館があり、「海と人との共生」をテーマに奄美の人々の暮らしと海との深い関わりがわかるよう展示が工夫されている。
奄美海洋展示館の奄美エコラマでは、珊瑚礁の海を立体的に見ることができるほか、ウミガメとのふれあい体験では、大水槽の魚やウミガメに直接餌を与えることもできる。
名瀬港沖で捕獲されたこのメガネモチノウオ(俗称:ナポレオンフィッシュ)は、全長1.4m、重量68kgと最大級のベラ科の魚である。
海底のミステリーサークルを作るのは、2012年に発見され2014年に新種として登録されたアマミホシゾラフグである。オスは胸ビレや尾ビレを使って直径2mの幾何学的デザインの円形の巣を作り、真ん中の着卵床にメスを呼んで卵を産んでもらい繁殖を行う。
奄美市の中心地、名瀬で有名な「鶏飯」の店「鳥しん」がある。半日かけて煮込んだ濃厚なスープは、昔ながらの製法を忠実に守っているという。
この店で是非とも味わいたいのが、奄美の名物スタミナ料理、ヤギ汁。独特のクセを抑えるためじっくり煮込んでいるのが嬉しい。他にも新しい郷土料理として考案された、奄美黒豚パパイヤ丼も人気があるというから、またの機会があれば食べてみたい。
名瀬港長浜地区に奄美市立奄美博物館がある。奄美群島の自然・歴史・文化について、多くの資料が展示されている。ここでは、奄美群島にだけ生息する、特別天然記念物のアマミノクロウサギと天然記念物のルリカケスの剥製に触れることができる。
今から100年ほど前から、奄美ではマベガイによる真珠養殖が行われてきた。島尾ミホの養父は加計呂麻島でマベ真珠の養殖を試みたという。加計呂麻島出身の島尾ミホは、『出発は遂に訪れず』や『死の棘』などで有名な文学者・島尾敏雄の妻である。島尾敏雄・ミホ夫妻は奄美大島名瀬市で20年ほど暮らしたため、関連資料が当館でも展示されている。
幕末の薩摩藩士・名越左源太が著した奄美大島の地誌『南島雑話』の写本、「博物館本」を所蔵する当館では、随時企画展で挿絵の一部を公開している。『南島雑話』は、島内の動植物や農耕儀礼、冠婚葬祭から伝説に至るまで詳細な挿絵入りで著したもので、奄美研究のバイブルといわれる。