半坪ビオトープの日記

歴史民俗資料館、あやまる岬

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歴史民俗資料館、石仏3体

石仏3体のうち、中央の石仏は寛永7年製。右の石仏は享保17年製。どれも手首が破損し、右2体は頭部が補修されているが、明治初期の神仏分離の影響と考えられている。

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旧石器時代の遺跡

旧石器時代から中世までの出土遺物が展示されている考古資料展示室もある。奄美市笠利町には約100ヶ所の遺跡があり、奄美群島で最も多数の遺跡が分布する地域である。奄美群島では約30,000年前の旧石器時代の遺跡が若干確認されている。当時は氷河期にあたり、海水面は現在より約140m低かったので、種子島屋久島等の大隅諸島は九州と陸続きだったが、以南の南西諸島はすでに海で分断されていた。旧石器文化がどこから伝播したかが注目されている。

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縄文時代遺跡

縄文時代前期(約7,000年前)以降から、笠利町東海岸を中心に多数の縄文時代遺跡が分布する。ほとんどが貝塚遺跡であり、地域色が強い縄文土器や石器、貝製品等が多数出土している。

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宇宿貝塚から発掘された古人骨

こちらの人骨は昭和53年に笠利町宇宿貝塚の土坑から発掘された古人骨である。20代前半の女性と嬰児の母子合葬で、ガラス玉や骨製管玉などの副葬品も見つかり、足の骨の劣化が見られなかったことから、位の高い人か祭祀者だったのではないかと推測されている。人骨の帰属年代は比較資料が少なく明確ではないが、弥生時代という説が有力と思われる。宇宿貝塚縄文時代前期から中世に至る複合遺跡で、縄文時代晩期終末頃の竪穴式住居跡や土器、石器、骨角器、中世の埋葬跡などが発掘され、奄美で初めて国指定史跡となり、現在は宇宿貝塚史跡公園として整備され出土品が展示されている。ただし、奄美では弥生時代の遺跡は非常に少ない。また、古墳時代および古代の遺物は貝塚以外にほとんどなく、古墳時代並行期、古代並行期と呼ばれて、沖縄の貝塚時代後期に比定されている。中世後期は琉球国統治時代、江戸時代は薩摩藩統治時代とされる。

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あやまる岬から笠利崎を見る

歴史民俗資料館があるあやまる岬は、太平洋を眺められる小高い丘となっていて、奄美十景の一つである。左手(北)には奄美大島最北端の笠利崎が見える。

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あやまる岬から太平洋

正面には太平洋が見渡せる。展望台のある丘の下の平坦地には遊具広場や海中プールなどの施設があり、複合公園となっている。奄美の乙女達は正月になると、赤・青・黄の糸で刺繍された手鞠で鞠つきをするが、この岬のなだらかな地形が「アヤに織られた手鞠」によく似るところから、いつの頃からか「アヤマル」と呼ばれるようになったと伝えられている。

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あやまる岬から土盛海岸を見る

右手(南)には土盛海岸が一望できる。多目的広場の外れにある「ソテツジャングル」という遊歩道の中には、縄文から弥生時代に使われていたという貝塚跡が残されている。岬一帯にはノロユタ神の祭事場所もあったようで、古くから神聖な場所とされていたという。

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テッポウユリ

あやまる岬にテッポウユリLilium longiflorum)が咲いていた。ラッパに似た筒状の白い清楚な花を横向きに咲かせる。南西諸島および九州南部が原産で、本州以東では園芸用に移入されたものが分布する。

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シマアザミ

あちこちに咲いているアザミは、日本固有種のシマアザミ(Cirsium brevicaule)。奄美大島から沖縄群島の海岸近くの岩場や草地に自生する。葉質は厚く光沢があり、羽状深裂して棘が多い。頭花は上向きに咲き、白色〜淡紅色。沖縄では白色が、奄美では淡紅色が多い。

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笠利崎

奄美大島最北端の笠利崎は、地元の用集落では用岬と呼ぶ。高台に建つ白亜の笠利崎灯台には10分ほどで登ることができる。手前には珊瑚礁、向こう側には美しい砂浜を眺めることができるが、海流がとても早いので海水浴には向いていない。

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ハマボッス

白い小さな花は、瀬戸内町のホノホシ海岸でも見かけた、ハマボッスLysimachia mauritiana)。右下に見える葉は長命草とも呼ばれる、ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)の葉である。

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笠利崎からあやまる岬を見る

笠利崎から南南東を振り返ると、先ほどのあやまる岬の段丘がよく見える。ここ笠利崎を最後に、奄美大島加計呂麻島一周、昨年のGW一週間に及ぶ旅は終わった。