半坪ビオトープの日記

フレペの滝


今年も知人の退職記念旅行を企画し、7月中旬に北海道知床半島の旅を満喫した。女満別空港から一路、知床半島の西海岸、ラウスに向かう。途中、小清水原生花園前を通ったので、中には入らなかったが道路沿いから眺めた。北海道の夏の海岸でよく見かけるハマナス(Rosa rugosa)の鮮やかな濃いピンク色が瑞々しい。ハマナスは、北海道に多いが、茨城県以北、鳥取県以北の海岸の砂地に自生する。バラ科バラ属で、名の由来は果実が梨に似た形をしているためで、茄子が訛ったものではない。

小清水原生花園オホーツク海と濤沸湖(とうふつこ)に挟まれた約8kmの細長い砂丘にあり、暗紫色のクロユリや、北海道では唯一ここに群生地がある黄色のエゾキスゲ小清水町の町花であるオレンジ色のエゾスカシユリ、北海道のシンボル花であるハマナスなど、およそ40 種の花々が咲き乱れる。この花がエゾスカシユリ(Lilium pensylvanicum)。北海道、樺太、シベリア、中国北東部などに分布し、北海道では道東、道北に多い。花弁の根元が細くて隙間があるため、和名の「スカシ」の由来となっている。

ウトロに近づくと、道路近くにオシンコシンの滝を認めたが、先を急いでウトロの海岸食堂で昼食をとった。少し小ぶりの生ウニ丼だったが、知床で最初の食事として生ウニをおいしく味わった。

昼食後、ウトロのすぐ北にある知床自然センターに行き、その裏手のフレペの滝遊歩道を歩いた。遊歩道入口には、最近のヒグマの目撃情報が張り出されていて、一瞬たじろぐ。まあ、大勢なので大丈夫だろうと高をくくる。天気が良いため草原は清々しいが暑く、木陰に入ると一息つく。

後ろを振り返ると、知床連山の山並みが見える。一番右手の高い山が羅臼岳(1661m)で、知床半島の最高峰である。知床富士とも呼ばれる活火山で、最近では2200〜2300年前、1400〜1600年前、500〜700年前までの3時期に活発な火山活動があったとされる。日本百名山、花の百名山に選定されている素敵な山だが、残念ながら体力不足では登れない。

笹原で小さなジャノメ蝶の仲間を見つけた。シロオビヒメヒカゲ(Coenonympha hero)という珍しい蝶で、北海道の中・東部のみに産する。国外ではヨーロッパ中部からシベリア、朝鮮半島、サハリン、南千島まで広く分布する。ジャノメチョウ類の蛇の目は一般に金環だが、この蝶の蛇の目は珍しい赤色の環である。ヒカゲという名とは裏腹に草原などの明るい場所で明るい時間帯に飛翔し、日が陰ると見られなくなる。

遊歩道を1kmほど進むと海岸の崖上に出る。右手にフレペの滝がいく筋にも分かれて落ちているのだが、残念ながら霧が次から次に湧き出て見えなくなった。晴天なのだが海には霧が発生していて、この後に予定しているクルーズ船が出港するか微妙な感じがする。

展望台の柵の周りに小さな白い花が咲いていた。ハコベの仲間のシコタンハコベ(Stellaria ruscifolia)である。和名は、色丹島で最初に発見されたことに由来する。北海道の知床半島根室地方、富良野岳、羊蹄山、本州の日光、中部地方の亜高山帯〜高山帯の岩礫地に生える多年草。全体に灰白色を帯び、茎や葉に細かな腺点がある。葉はやや厚く、花は直径約1.5cm。5弁花の花弁の先端は2深裂する。

遊歩道は崖の手前を大きく時計回りに回って戻っていく。ふと振り返ってみると、草藪の向こうにこちらを眺めているエゾシカを見つけた。屈みこんで草を食べているらしく、時々頭を出して見張っている様子だ。

遊歩道が終わって自然センターの裏手に出たところで、左の林の中にエゾシカの親子を見つけた。ヒグマにこそ出会わなかったが、エゾシカを間近に見ることができて、知床の自然に触れた気がする。

知床自然センターに入ると、ヒグマの毛皮が陳列されている。「素通り厳禁!」と表示され、「さわってください」と書き添えられていた。