雲行きが悪くなってきたが、もう少し観光してから宿に向かうことにする。ここは利尻島南端に近い仙法志御崎海岸、一帯は公園になっている。
かつて山から流れ出した溶岩流が固まった荒々しい海岸と、その向こうに利尻富士の景色が見事だというが、残念ながらその勇姿は見えない。
打ち寄せる怒涛が黒々とした岩場に当たって砕ける姿が勇ましい。手前の岩礫地に生えているのは、シロヨモギ(Artemisia stelleriana)である。北海道および本州の茨城県・新潟県以北の海岸に自生する多年草。花期は8〜10月。全体が白い綿毛で覆われ、雪白色になる。
この辺りの「ニウロコと周辺の澗」は、北海道遺産に選定されている。袋澗(ふくろま)とは、漁獲したニシンを一時的に補完する港湾施設である。ニシン漁の盛んだった積丹半島や利尻島では数多く存在したが、ニシン漁が廃れた後は船揚げ場や漁港に改造されて残されている場合がある。利尻島には35基の袋澗が存在した記録があり、西海岸のニウロコの周辺では溶岩流の岩場地形を利用し、安山岩の間知石を積み込んで堅固な袋澗が数多く造られた。
御崎公園では、袋澗を生簀のように改造して、アザラシのいる自然水族館として利用している。天気の良い日にはアザラシへの餌やり体験もできるという。