半坪ビオトープの日記

羽黒三田神社、奥氷川神社


これだけ色々な花が咲いていると、奥多摩むかし道もさぞ混んでいると思いきや、半分のコースで早帰りを決め込んでいるせいか、あまり人と会わなかった。それでも奥多摩駅に近づくと、駅から奥多摩湖へ向かうハイカーの群れとすれ違うようになった。道端にはあちこちで、ヤマブキ(Kerria japonica)の花が眩しいほど美しく咲いている。1属1種のヤマブキ属の落葉低木で、北海道〜九州まで分布し、国外では中国に産する。枝の芯(髄)はスポンジのようで、切った枝の中心を細い棒などで押し込むと、髄が抜けるときにポンと音がする。子供の頃、遊んだ覚えがある。その音から、スッポンやスッポンポンなどの方言があるという。

足元に咲いている白いイチゴの花は、クサイチゴ(Rubus hirsutus)である。背丈が20〜60cmと低く、草本に見えるが実際は落葉小低木である。本州〜九州の山野に広く分布し、白色の5弁花を3〜4月に咲かせる。果実は大型で赤熟し食用となる。酸味が少なくとても甘い。

石垣の手前に咲いているのは、オオアラセイトウ(大紫羅欄花、Orychophragmus violaceus)である。別名にショカッサイ(諸葛菜諸葛孔明が広めたとの伝説から)、ムラサキハナナ(紫花菜)がある。原産地は中国で、日本では江戸時代に輸入され栽培されたものが野生化し、全土で見られる。ここ数十年、モンシロチョウに代わってスジグロシロチョウが都市部で増えてきたのは、食草として好適なオオアラセイトウが都市部で増えているからといわれる。 

ヤマブキと同じように藪から道に垂れ下がって咲いているのは、ヒメウツギ(Deutzia gracilis)である。ウツギ属の落葉低木で、本州の関東地方以西、四国及び九州の日当たりの良い場所に自生する日本固有種。花期は5〜6月。枝先に円錐花序をだし、やや下向きに白色の花を多数つける。

ここまで時々廃線の高架跡を見かけてきたが、とうとうむかし道の脇に廃線のトンネルが現れた。むかし道はトンネルの手前で右手に下っていく。

むかし道沿いに時々民家が現れると、近くに色々な花木が植えられているが、これは自生のミツバツツジ(Rhododendron dilatatum)であろう。トウゴクミツバツツジをはじめ、ミツバツツジの仲間はいくつもあり、変種もいくらか知られているが、細かい区分けは素人には難しい。4〜5月頃、紅紫色の花を先に咲かせ、花後に3枚の葉を出すのがミツバツツジ類である。

道が下り坂となってむかし道も終わりに近づく。急な坂は羽黒坂で、昔は荷馬車が苦労した場所と伝わる。坂の途中に羽黒三田神社の石段の参道がある。鳥居の先の急な石段を上ったところに隋神門らしき門が見えるが、そこには古い神輿が祀られているという。その先にも急な石段が続き、さらに足場の悪い山道となってなおも進んでようやく羽黒三田神社の社殿にたどり着くという。

祭神は正殿に高皇彦霊神と少彦名神を祀り、左殿に天穂日命、右殿に倉稲魂命を祀る。社伝では、貞観3年(861)出雲国の土師連行基が東国に下向し、本郡御嶽山に請り神の告を蒙り、この村に来て、高皇彦霊神と少彦名神を祀り、これを穴澤天神と称したという。本社南山麓に清泉湧き出す洞窟あり、これを穴澤と称した。稲城市穴澤天神社、国立市谷保天満宮あきる野市穴沢天神社とともに、延喜式神名帳多摩郡穴澤神社」の論社とされている。奥多摩駅へ戻る途中に元巣集落があるが、元巣の森は、羽黒権現社(現、羽黒三田神社)の旧地であると『武蔵風土記』に記されているという。かなり由緒のある神社なのだが、社地が広大で境内が山深く、社殿まで登って行くのは次の機会にした。

羽黒坂はすぐ国道に出るので東に進むと、奥多摩駅入り口の角に奥氷川神社がある。社殿の手前には「氷川の三本杉」が聳えている。鎌倉時代に神籬(ひもろぎ)として植えられたという伝説がある神木で、推定樹齢は約700年。樹高49.3m、幹囲7.36m。幹は3本に分かれながらも樹勢は旺盛で、杉としては都内最高を誇り、都の天然記念物に指定されている。

氷川神社は、大宮の氷川神社、所沢山口の中氷川神社とともに「武蔵三氷川」と呼ばれ、一直線に並んで本社・中社・奥社の関係になっているともいわれる。日本武尊が東征の折に祀った社を起源とし、貞観2年(860)簸川(ひかわ)修理大輔土師行基が「奥氷川大明神」として再興したと伝える。本殿は神明造である。

祭神は素戔嗚尊奇稲田姫命を祀り、拝殿は明治15年(1882)に新築されている。天満宮大麻止乃豆天神(おおまとのつのてんじん)の社号も持つ。中世、和田村(現在の青梅市和田町日向和田)以西の地を氷川郷と呼んでいたが、この郷名は奥氷川神社の社号から起こったものという。
ここからもえぎの湯までは10分もかからず、早めに着いたのでゆっくり過ごすことができた。