半坪ビオトープの日記

小笠原資料館


旧小笠原家の敷地内に小笠原資料館が建っている。金沢21世紀美術館などの作品で知られる、日本の建築家ユニットSANAA(サナア)が設計し、平成11年(1999)に竣工したユニークな建物である。設計者の一人・妹島和世氏の母が小笠原家出身の関係による。SANAAは、建築界のノーベル賞ともいわれるプリッカー賞を2010年に受賞している。

80mのガラスの箱を6本の柱で支えており、箱の下にある白い円筒形の部分が受付・事務室である。裏側のスロープを上って左奥から建物に入る。建物は多少うねっていて、それで振動を分散して揺れを減らしているらしい。
館内では江戸時代の旗本、伊豆木小笠原家の系譜やゆかりの武具、日用品などの所蔵品を解説・展示している。

これは小笠原屋敷古図である。古図から小笠原家の館が小さな城郭の形であったことがわかる。大手橋から坂を登ると城門と物見櫓があり、門内は枡形をなし、右手に折れて石垣上に出ると供侍所・厩舎があり、突き当たりに玄関を備えた御用所がある。その裏側に書院・居間・台所などの建物が並んでいた。

六曲一双の金屏風には、和歌と思しき半紙が所狭しと貼られている。残念ながら読みこなすことができない。

上には信濃源姓・小笠原家歴代姓名が、清和天皇からの系図として示されている。下には小笠原家家紋三階菱の謂れが記されている。

書院の屋根の杮葺(こけらぶき)は平成20年に全面葺き替えられたが、その時の資料が展示されている。上が箕甲、右下が隅棟の杮板である。玄関屋根正面は箕の尻のように丸くなっているので箕甲といって、形も葺き方も異なる。書院の屋根の四隅には膨らんだ隅棟があり、その杮板は丸みを出すため木口が扇型になっている。今回の杮板は、厚さ3mm、長さ30cmのサワラの板で、それを丁寧に並べ10枚毎に銅板を入れる。それは銅から生じる緑青が杮板の腐朽を防ぐからである。板1枚につき40本の釘を刺すが、鉄釘だけでは足らず竹の釘も使用している。

旧小笠原家書院を見学する前に、天竜峡近くのわらび家という蕎麦屋で昼食をとった。

この蕎麦屋は十割そばや九一そばが売り物だが、ご当地名物のぶっかけおろしそばが珍しいので試してみた。おろしに使う親田辛味大根は、下條村親田地区に伝わる伝統野菜である。地元では「あまからぴん」と表現する、口に含んだ瞬間にほのかな甘みを感じた後に強い辛味が特徴で、蕎麦の薬味に相性が良くそばの味が引き立つ。

鴨せいろは濃いめの鴨汁で冷たいそばを食べるありきたりのものだが、ちょっとそばが少なめなのが残念だった。