半坪ビオトープの日記

赤倉岳の肩


山の稜線に近づくと、背の低いハイマツ(Pinus pumila)が群生している。本州の中部地方以北および北海道の高山帯に生える常緑針葉樹で、高さは1〜2mになる。よく枝分かれして長さ10m以上になるものもある。日本の高山ではよく森林限界の最後の低木として見晴らしのよい景観をつくり出すが、亜高山帯に近い林内では樹高2mほどの灌木となる。右手前に奇数羽状複葉の葉が見えるが、ナナカマド(Sorbus commixta)の葉であろう。

丸形の花をたくさんつけているのは、カラフトイチヤクソウ(Pyrola faurieana)である。北海道と東北地方の亜高山帯の草地に生える多年草で、高さは10~20cmになる。花冠はわずかに紅色を帯びた白色で径9mm。イチヤクソウには類縁種が多いが、花柱がまっすぐで曲がらず、花冠が10〜20個と密につくのが特徴である。

ここには赤倉岳(1548m)の標識があり、一瞬、頂上かと思ったが、よく読むと火山爆発の跡の断崖の説明がされていて、ここから頂上まで断崖に注意するよう書かれている。残念ながら、赤倉岳の肩にすぎないようだ。

赤倉岳の肩の北側には岩峰が突き出ている。

日当りのよい場所にはウゴアザミの群落がある。羽後とは秋田県の大部分と山形県の北部の旧国名だが、その名の通り、朝日連峰・月山・鳥海山秋田駒ヶ岳八甲田山に分布する。

赤倉岳は、北八甲田と南八甲田のそれぞれにあり、どちらも火山の爆裂火口を持っていて赤っぽい岩質の崖がある。東側の斜面には、白く見えるヤマハハコの花が群生している。左手前にちらっと見える黄色の花は、イワオトギリと思われる。

北に突き出た岩峰の背の草の間に、黄色いオオバキスミレ(Viola brevistipulata)の花が一つだけ咲いていた。本州の近畿地方以北の日本海側および北海道南西部の山地帯〜亜高山帯の林縁や草地に生える多年草で、高さは5~30cmになる。日本特産種で、変種も多い。花期は6~7月なので、よく残っていたといえる。

足下にはコケモモ(Vaccinium vitis-idaea)の赤い実がなっている。四国、本州の中部地方以北および北海道の亜高山帯〜高山帯の林縁、岩礫地などに生える常緑小低木で、高さは5~15cmになる。実には酸味があり、生食するほか果実酒やジャムなどに利用する。和名の由来は、地面を這う様子を「苔」にたとえ、「モモ」は方言で「木の実」を意味する。アイヌ語では「フレップ(赤い実)」という。種小名の vitis-idaea とは、ギリシア神話にでてくる「クレタ島のIda 山のブドウ」を意味する。

赤倉岳の肩の南南東に続く尾根は、爆裂火口の崖を取り巻いてまだまだ続いているが、どこに赤倉岳の山頂があるのか分かり難い。どちらにしてももう少し上るしかないだろう。

その先の左手奥には赤倉岳の北の尾根が見える。その先彼方には明るい緑色に見える田代平湿原が認められる。