半坪ビオトープの日記

田茂萢湿原


遊歩道の木道は湿原から離れて進む。再び田茂萢(たもやち)湿原を眺めるところに出ると、今度は黄色いキンコウカの花がたくさん咲いているのが認められた。

ユリ科のキンコウカ(Narthecium asiaticum)は、北海道と本州の近畿地方以北の主に日本海側の山地帯〜高山帯の湿原や湿地に生える多年草で、群生することが多く、高さは20~40cmになる。葉はアヤメのような剣状線形。花期は7〜8月で、総状花序に花被片6枚の星形の黄色い花をつけ、下から開花していく。和名を漢字では、金光花あるいは金黄花と書く。毒性のあるサポニンほかを含み、放牧牛が食べて中毒も起きたので注意が必要である。

ほかに湿原をじっと見つめてようやく見つけたのは、地味なホソバノキソチドリ(Platanthera tipuloides)だけである。ほとんど枯れかけた姿が左上と右下にある。四国の剣山、本州の中部地方以北および北海道の深山の湿原や湿地に生えるラン科の多年草で、茎の先に黄緑色の小さな花を多数つける。よく似た変種のコバノトンボソウ(P. t. v. nipponica)の細長い距が上向きにつくのと異なり、下向きにつくのが特徴である。

木道脇にはほかにも、薄青紫色のタチギボウシ(Hosta sieboldii var. rectifolia)の花がときおり咲いている。コバギボウシの変種であり、本州の中部地方以北および北海道の亜高山帯の湿原や湿地に生える多年草で、花径の高さは1mちかくなる。

湿原の周りにはいろいろな低木が茂っているが、その中にアジサイ属のノリウツギHydrangea paniculata)の花が咲いていた。北海道〜九州の山地の林縁などに生える落葉低木で、高さは2〜5mになる。花はよく目立ち、ハナカミキリや蝶などの昆虫がよく集まる。

八の字形のゴードライン(gourd=ひょうたん)と呼ぶ自然遊歩道の一番端から、赤倉岳への登山道が分岐している。急な森の中を上り始めると、風変わりな小さな白い花が咲いていた。ラン科のアリドオシラン(Myrmechis japonica)である。四国、本州の近畿地方以北および北海道の山地帯〜亜高山帯の林内に生える多年草で、高さは5~10cmになる。葉は互生し、長さ1cmほどの広卵形、花は長さ1cmほどの釣鐘型で基部が丸く、唇弁の先は2裂してやや開く。

登山道を上っていくとようやく花がちらほらと現れてくる。登山道の脇で咲いていたのは、セリ科のハクサンボウフウ(Peucedanum multivittatum)である。北海道および本州の中部地方以北の高山帯の草地に生える多年草で、高さは30~90cmになる。

急な登山道を上っていき、視界の開けたところから振り返ると、ロープウェイ駅と田茂萢岳(1326m)が認められた。

田茂萢岳の手前には田茂萢湿原が広がっている。望遠レンズで目一杯拡大してみると、湿原展望台の左に大き目の池があり、その周りに小さな沼がいくつも点在しているのがはじめてわかる。