半坪ビオトープの日記

勇駒別湿原


翌朝も晴れていたので、朝のうちに勇駒別湿原などを散策することにした。旭岳ロープウェイの山麓駅左側と公共無料駐車場の間に木道が整備されている。標高1,100mの湿原でエゾノリュウキンカミズバショウが見られると説明されている。

早速、湿原に入ってみると、シナノキンバイに似た花が咲いていた。これはチシマノキンバイソウ(Trollius riederianus)である。北海道の大雪山系〜知床山系の沢の源頭部や草地に生える多年草で、高さは15~80cmになり群生することが多い。花弁のように見える5枚は萼片で、本当の花弁は線形で、雄しべとほぼ同じ長さである。

白い小花をたくさん咲かせているのは、セリ科の花である。複散形花序の形からは種名が分かり難いが、見たことのない長い楕円形の小葉の形からすると、外来植物のイワミツバ(Aegopodium podagraria)と思われる。ヨーロッパから持ち込まれ、地下茎で殖えるので、円山動物園など北海道各地で猛威をふるっている。葉は食用にされ、戦前に栽培されていたものが逸出し、東京都でも野生化している。北海道ではブルーリストA2に載っている。

こちらの小さな赤い花は、ヤナギランと同じアカバナ科のイワアカバナである。昨日旭岳源水で見かけた白いイワアカバナと同じだが、こちらの方が紅色が強く、つぼみは赤紫色を呈している。やはり雌しべの柱頭が球状に膨らんでいる。

林に近いところで、バイケイソウ(Veratum album ssp. oxysepalum)が咲いていた。北海道、本州の近畿地方以北、四国、九州の山地帯〜亜高山帯の林内や湿った草地に生える多年草で、高さは0.6~1.5mになる。
残念なことに整備された木道はしっかりしていたが、遊歩道を埋め尽くして繁茂している草を少しも刈り取っていないので、勇駒別湿原を廻ることは数十メートルしかできなかった。

こちらの大きなユリは、ウバユリ属のオオウバユリ(Cardiocrinum cordatum var. glehnii)である。北海道、本州中部地方以北の山地帯〜亜高山帯のやや湿った林内や草地に生える多年草で、高さは1.5~2mになる。花は緑白色で10~20個が横向きに咲く。鱗茎はデンプンを含み、食用にできる。アイヌ民族ではトゥレプの名で食用にされ、植物質の食品の中では穀物以上に重要な位置を占めていた。旧暦4月をアイヌ語で「モキウタ(少しウバユリを掘る月)」、5月を「シキウタ(本格的にウバユリを掘る月)」と呼び、この時期に女性達は山野を廻りオオウバユリの球根を集めたという。

勇駒別湿原が少しも管理されていないので、近くにある旭岳ビジターセンターでほかの散策路を紹介してもらおうとした。自然探勝路のコマクサコース、クマゲラコース、見晴台コースの散策路は、どれも倒木があって整備が行き届いていないらしくお勧めしないとのこと。高山植物園も花はほとんど終わっているし、距離のある天女ヶ原湿原への道もお勧めしないという。この辺りは標高が低いため花期が早く、エゾノリュウキンカミズバショウも5月の連休前後が見頃で、初夏に自然探勝路を草刈りした後は、管理がまったく行き届いていないと感じた。
しかたなく道路に沿って少し散策していたら、オニシモツケ(Filipendula camtschatica)の群生を見かけた。北海道、本州中部地方以北の山地帯〜高山帯の林縁や湿った草地、渓流沿いなどに生える多年草で、高さは0.5~1.5mになる。大きな葉は掌状に5中裂し、縁に重鋸歯がある。散房状の花は、径6~8mmと小さい。

こちらの白い小花は、シロバナニガナ(Ixeris dentate var. albiflora)である。日本各地の山野に生える多年草で、高さは40~70cmになる。ニガナの変種とされ、母種より大きく、ニガナの頭花が5個なのに比べ、こちらは7~11個ある。

こちらの黄色の小花は、ハナニガナ(I. d. v. a. amplifolia)である。シロバナニガナの1品種で、高さも頭花の数も同じだが、黄色の花をつける。

岳温泉の勇駒荘の入口近くに、駒止の滝がある。大正時代、旭岳縦走を計画した部隊が、この滝に人馬ともに行く手を阻まれたため、駒止の滝と呼ばれるようになったという。