半坪ビオトープの日記

天人峡、旭岳源水


岳温泉に昼前に戻ったので、一山南の天人峡に行って羽衣の滝を見ることにした。
大雪山旭岳の南西麓にある渓谷で、石狩川支流の忠別川上流部にあり、延長約8kmある。
明治33年開湯の天人閣をはじめ3軒の天人峡温泉があり、大雪山縦走路の中心部、化雲岳への登山拠点にもなっている。
天人峡には、大きな岩壁や溶結凝灰岩の柱状節理がみられ、北壁には落差270m、道内最大の羽衣の滝がかかり、さらにその上流には敷島の滝がある。
羽衣の滝は天人閣の裏手にあるのだが、冬場に見晴台付近で土砂崩れがあり、羽衣の滝への遊歩道が通行止めとなっていて、残念なことに滝を見ることができなかった。

羽衣の滝の対岸右手に大きな棒状の岩が立っている。羽衣伝説に因んで名付けられたこの「見返りの岩」は、高さが約20mある。

天人閣の真向かいにある「涙岩」は巨大な一枚岩で、天女が羽衣をなくして天の国に帰れなくなって困って泣いていた涙が今でも流れているとされる。この岩は、今から約3万年前に旭岳の東方にあるお鉢平の火山が噴火して流れてきた火砕流が堆積したものといわれる。

日帰り温泉で天人閣に寄ってみると、源泉掛け流しだが、黄褐色を呈する露天の岩風呂にはお湯がほとんどなく、入れたのは内風呂だけだった。それでも天然の岩肌を壁面に取り込んだ野趣たっぷりの岩風呂であった。

天人峡温泉は旭岳温泉の南で、直線距離だと4km弱だが、道路では忠別湖まで戻って折り返すように山に入るので約20kmある。天人峡から忠別湖に戻る途中の森の中に、「森の神様」と呼ばれる桂の巨木がある。樹高31m、幹廻り11.5m、推定樹齢900年の老巨木で、巨木百選に選定されている。

忠別湖の手前の折り返し点(分岐点)近くに、大雪旭岳源水がある。「平成の名水百選」に選定された水で、大雪山旭岳に降り積もる雪や雨水が地下で濾過された湧き水である。駐車場に面した源水岩から、誰でも自由にペットボトルに汲み取ることができる。
水の種類は中硬質で、軟水の多い日本では非常に珍しい水である。カルシウムやミネラルが豊富で、高血圧や健康によいともいわれる。
源水のある東川町では、全国的にも珍しく上水道がなく、全ての町民が地下水で暮らしている。水温が約7℃と一年を通じ一定を保ち、毎分約4600リットルもの水が涌き出している。

源泉は遊歩道の木道の約300m先にある。つまり源泉から流れ出した見た目にも美しい小川に沿って、「熊に注意」の張り紙もあるが、整備された木道の上をゆっくり歩くことができる。緑の苔がことのほか瑞々しい。

川縁に咲いている白い小花は、セリ科のシャク(Anthriscus sylvestris)である。日本各地の山地の湿地などに生える多年草で、高さは70~150cmになる。葉は互生し、長い柄があり、2回3出羽状複葉となり、小葉は細かく裂ける。複散形花序に白い5弁花をたくさんつける。

こちらの黄色い小花は、ミゾホオズキ(Mimulus nepalensis var. japonica)である。日本各地の山野の湿地に生える多年草で、高さは10~40cmになる。上部の葉腋から花柄を出して1花をつける。黄色の花冠は、長さ10~15mmで、筒状の唇形になり先端は5裂する。和名は、溝に生え、果実の形がホオズキに似ることによる。
右上の白い小花は、イワアカバナ(Epilobium cephalostigma)である。日本各地の山中の湿地に生える多年草で、高さは20~60cmになる。葉は対生し、葉身は長楕円形、先が尖り縁に鋸歯がある。長い花柄の先に白色あるいは淡紅色の4弁花をつける。よく似るアカバナとの違いは、雌しべの柱頭がアカバナではこん棒状なのに比べ、イワアカバナでは球状となる。

清々しい流れに見とれているうちに、すぐにも源泉に至る。大雪山の雪解け水が、地中深くの天然フィルターで濾されて、冷たいまま迸り出ている。良質の銘水として知られるだけあって、実に美味しい。