半坪ビオトープの日記

田代池


田代橋を渡って、疲れた者は真っ直ぐ帝国ホテルへ休憩に向かい、残りは梓川左岸を田代池に向かう。水量も増え、川幅が狭くなって、梓川の流れを手に取るように近くで見ることになる。

雨も上がり、川岸に下りることができるところでは、川の流れる様を写真に撮る人が多い。

この風変わりな植物はラン科のオニノヤガラ(Gastrodia elata)という。北海道〜九州の山地の樹林下、湿原に生える腐生植物で、高さは40~100cmになる。木材腐朽菌であるナラタケに共生して栄養を受け取り、葉緑素を持たず光合成も行わない。花期は6〜7月で、黄褐色の花を茎の先に20~50個総状につけ、下から開花していく。数個を残し、ほとんど咲き終わっている。花は壷状で、中に側花弁と唇弁がある。和名の「鬼の矢柄」とは、矢を地面に突き刺したような形から名付けられた。

左に曲がって田代池に向かうと、イネ科やカヤツリグサ科の細い葉が密生する湿原となる。晴れていれば、明神岳穂高の山々が見渡せる絶好のポイントと思われる。

湿原を抜けた突き当たりの田代池は、裏手の霞沢岳(2646m)から流れ下る渓流が、一時、川幅を広げて安らいでいるような光景で、観る者の心も安らぐ。

人跡未踏の大自然を垣間見ていると、しばし時の経つのを忘れるかのようだ。

ヨツバヒヨドリの花には、ミドリヒョウモン(Argynnis paphia)のメスが夢中で吸蜜している姿が見られた。

こちらでは、ミドリヒョウモンのオスが吸蜜していた。ミドリヒョウモンは、北海道〜九州に広く分布し、樹林や草原を元気に飛翔する。東京の小石川植物園などでも見かけることができる。後翅裏の星のない緑色が名前の由来であり、オスの前翅の発香鱗条が特徴である。このようにヒョウモンチョウでは、オスとメスの紋様が違う種類が多い。