半坪ビオトープの日記

もみじ谷吊橋、回顧の吊橋


塩原温泉の案内パンフを参考に塩原渓谷を観て回る。渓谷の下流にいくつか吊橋が架かっているが、最下流にある塩原ダムによりできた塩原湖には「もみじ谷大吊橋」がある。ダムの形式は重力式コンクリートダムで、主に灌漑、洪水調節の多目的ダムである。

歩行者専用の大きな吊り橋は全長320mで、無補剛桁歩道吊橋としては本州一の長さを誇るが、通行料金がかかる。渡った先にはもみじ谷公園がある。

大吊橋の上流には、回顧(みかえり)の吊橋が架かっている。国道に面したガマ石園地から丸太組の急な階段を下りていくと、長さ100m、高さ20mほどのいかにも吊橋らしい吊橋に出る。

明治の文豪尾崎紅葉は「金色夜叉」の中で「回顧橋は三十尺の飛瀑を踏みて、山中の景は始めて希なり」と紹介しているそうだ。現在の橋は昭和62年完成で、ダムもできていなかったのだから、眺めは今より美しかったと思われる。

塩原渓谷遊歩道はここから始まり、留春の吊橋、不動吊橋を渡り、回顧の滝、留春の滝を眺めたり、不動の湯や岩の湯の混浴露天風呂でくつろぐこともできるが、雨模様なので散策は諦めた。

園地への戻りは緩やかな砂利道を選んで上っていくと、道の脇に小さな滝が流れ落ちていた。

塩原温泉ビジターセンターでは、「温泉、吊橋、滝」を中心に自然豊かな塩原の魅力をコーナー毎に紹介している。塩原は、地質学上では日本有数の化石の産地として知られ、今から数十万年前に堆積した塩原湖成層から木の葉を中心に多くの化石が掘り出されている。「木の葉化石園」もあるのだが、このセンターで少しだけ観てまわった。

ビジターセンターの近くに「天皇の間記念公園」があり、その入口付近に小さな淡紫色の花が咲いていた。ユリ科ヤブラン属のヒメヤブラン(Liriope minor)で、日本全土の日当りのよい野原などに生える多年草である。葉は線形で長さ10~20cm、幅1.5~2mm。花は上向きに開き、花被片6個は楕円形で平らに開く。

天皇の間記念公園」は、元の塩原御用邸にあった御座所をこの地に移転・公開したものである。元の御用邸は、那須野が原開拓の祖・栃木県令三島通庸の子・三島弥太郎が別荘地を献上したものであり、大正・昭和の皇族が利用していたが、戦後、厚生省に移管され、現在は、国立塩原視力障害センターが開設されている。

建物は、木造平屋建て、間口8間奥行7間、屋根は銅板平葺きで、東南西の三方には板縁を廻らせている。

内部は長畳敷き、壁は美濃和紙を使った袋張、照明器具は洋風である。床の間は黒漆塗りの框に薄畳を敷き、床脇は地袋を設け堅繁の障子を建てている。建物内には調度、文具、文献、写真など、皇族の別荘での暮らしぶりを窺わせる様々な資料が展示されている。