半坪ビオトープの日記

榛名神社、神楽殿


榛名川を右に見ながら上ってきた参道が、御水屋のところで直角に左に折れて、急な石段を上り始める。榛名川の対岸には、細い瓶子(みすず)の滝が見える。瓶子とは、神に供える神酒を入れる器のことで、滝の両脇の岩が瓶子岩と呼ばれていたことに因む。滝の水も御水屋の水も万年泉の水とともに古くから御神水とされてきた。ただし、瓶子の滝は、後世に人工的に作られた滝という。

曲がり角には、矢立杉という巨木が聳えている。武田信玄箕輪城を攻略の際、矢を立てて祈願したといわれる。推定樹齢1000年、周囲は9m以上、高さも30m以上あり、国の天然記念物に指定されている。

矢立杉の上、左手に神幸(みゆき)殿が建っている。安政6年(1859)に建立された。神幸祭のとき神輿が出御し留まる社殿である。境内の建物の中では最も簡素な形式をもち、塗装は施されず古式の仏堂の形式を踏襲している。

石段の突き当たりには、大きな奇岩に挟まれるように神門が建っている。神仏習合の名残を残して、素朴で飾りが少ない。

神門を潜ると、左手前に折り返して別の石段を上り始める。正面には双龍門が構え、その左手後方には大きな鉾岩(ヌボコ岩・ローソク岩とも)が塔のように屹立している。

双龍門は、安政2年(1855)の建立。間口10尺、奥行9尺、入母屋造銅板葺き、正面と背面に千鳥破風、四面に軒唐破風をつける総欅造りの四脚門で、全体に彫刻が施された高い装飾性をもつ門である。 

4枚の扉にはそれぞれ丸く文様化された龍の彫刻が施されていることから双龍門と呼ばれるようになった。羽目板の両側には「三国志」にちなんだ絵柄が彫られており、天井の上り龍、下り龍とともに双龍門の風格を高めている。右手に見える龍は、下り龍である。

双龍門を潜って上り詰めると、本殿や国祖社などが建ち並ぶ広い境内に出る。まず左手に神楽殿がある。明和元年(1764)に再建されている。棟梁は佐藤直右衛門。北面が唐破風造、南面が切妻造銅板葺きで、方2間の高床形式。本殿と向き合い、高床形式で床の高さが同じになるように建てられている。

榛名神社神代神楽は、この神楽殿で奏上される神楽舞で、男舞22座、巫女舞14座の36座の演目があり、摺り足を基本とし無言で舞われる独特の神楽舞である。格天井には花鳥獣や神楽面などが天井画として描かれている。