半坪ビオトープの日記

山中温泉、こおろぎ橋


越前の永平寺から少し戻り、加賀温泉郷の中でも山と渓谷に囲まれた、緑豊かな山中温泉に泊まった。加賀・能登懐石の前菜は、甘海老の具足煮や姫サザエ旨煮など。

海鮮北前船盛りには、蒸し鮑や桜鯛、ブリの子のガンドなど北陸の海の幸が揃いうれしい。

煮物は加賀の郷土料理の「鴨の治部煮」で、これまた美味しい。

山中温泉は、行基による開湯伝説があり開湯から1300年とされるが、平安時代の開湯伝説もよく知られる。鎌倉武士の長谷部信連が傷を負った白鷺が傷を癒しているところから発見し、改めて掘ってみたところ温泉が湧き出たと伝えられている。長谷部信連を祀る長谷部神社が温泉街の中程にある。ほかにも山中温泉には、芭蕉が称賛した日本三名湯の一つ、総湯の菊の湯や、行基が開いたとされる医王寺、黒谷橋やこおろぎ橋の架かる鶴仙渓遊歩道などがある。
芭蕉や夢二など多くの文人墨客も訪れている、こおろぎ橋が近くにあったので散歩に出かけた。

渓谷に向かって下りていくと、右手に岩不動という社があった。祀られている岩不動明王は、目の神であるという。

こおろぎ橋は、奇岩・怪石が並ぶ中を清流が流れる、鶴仙渓に架かる総檜造りの橋で、江戸時代に造られたが、当時の姿で平成2年に架け替えられている。四季を通して湯客を魅了する、山中温泉を代表する名勝地として知られる。

こおろぎ橋の名の由来は、落ちると危険なことから「行路危」が転じた、昆虫のコオロギによるとの説があったが、最近では「清ら木」から転じたとされている。橋の下を流れるのは大聖寺川で、ここから下流の黒谷橋に至る渓谷を鶴仙渓と呼ぶ。

川縁には、アヤメ科のシャガ(射干、Iris japonica)の花が咲いている。中国原産で、かなり古くに日本に渡来した帰化植物で、本州から九州までの人家近くの湿った林下に群生する。白っぽいアヤメに似た花の花弁には、濃い紫と黄色の模様があり美しい。

鶴仙渓の名は、明治時代の書家、「日下部鳴鶴が好んだ渓谷」に由来している。こちらの岸には、セリ科のシャク(Anthriscus sylvestris)の花が咲き誇っていた。日本全土の山地の湿地に自生する多年草で、高さは1m前後になる。花が展開する前の茎や葉は、山菜として食用にされる。根も、ヤマニンジンと称して食用にされる。