半坪ビオトープの日記

祖谷渓


祖谷街道やかずら橋の周辺には、藤の花がたくさん咲いている。花序が長く伸びず球形に近く、花色は紫色が濃いので、ヤマフジ(Wisteria brachybotrys)であろう。普通のフジはつるが右巻きで、ヤマフジ左巻きだが、そこまで確かめなくても花の様子で判断できる。本州西部、四国、九州の山地に自生する。

かずら橋より上流の東祖谷菅生にある奥祖谷二重かずら橋は、長さ42mの男橋と20mの女橋が並んで架かっているという。そこは次の機会に譲ることにして、祖谷川を下って、祖谷渓の絶景に向かう。祖谷街道を北進すると道はどんどん狭くなり、下流に向かうのに道は上がっていき、いつのまにか断崖絶壁の上を走っているのに気づく。

100m以上もの高みからはるか下の谷底を覗き込むと、水量が少ないのか水たまりが数珠つなぎのように連なっているように見える。かなり干上がって川床を歩けそうにも見えるが、歩く人などいないと思う。

深いV字谷の続く祖谷渓は、吉野川支流の祖谷川にあり、全長は10kmにも及ぶ。高さ数十〜100mの高低差で、隔絶された深山渓谷の景観を呈する。

祖谷大橋やかずら橋の周辺では、昔から祖谷そばが有名で、こんにゃくなども産する。けれどもこの断崖絶壁の辺りは、一軒宿の祖谷温泉以外に人家が見当たらない。

日本三大秘湯の一つに数えられる祖谷温泉は、観光地としても人気を集めている。露天風呂は170m下の谷底の渓流沿いにあり、そこへケーブルカーで下っていくようになっている。

祖谷温泉のすぐ先の断崖には、祖谷街道の開設工事で残った岩が突き出ており、岩の上には、かつて地元の子供や旅人が度胸試しをしたという逸話をもとに作られた小便小僧が立っている。度胸試しどころか、約200mの高さから谷底を見下ろすと足がすくむ。