半坪ビオトープの日記

厳美渓から猊鼻渓


岩手県の南玄関、一関の東西には古くから親しまれている景勝地がある。東には猊鼻渓、西には厳美渓がある。厳美渓は、栗駒山を水源とする磐井川中流の渓谷で、全長2kmにわたる。厳美渓のほぼ中心に位置する天工橋から下流を眺めると、彼方には御覧坊橋という吊橋が見える。その先には鈴振橋がある。

厳美渓は、栗駒山の噴火によって堆積したデイサイト質(石英安山岩質)凝灰岩が、磐井川の水流によって浸食され、形成されたものである。奇岩、瀑布、深淵と様々な表情を見せるが、特に川底には甌穴の発達が顕著である。上流には長者滝橋があるはずだが、かなり遠そうでなかなか認められない。

高さ10〜20mの河成段丘の間を流れる渓谷美は素晴らしく、一帯を治めた伊達政宗もこの地を賛美している。近代の文人幸田露伴もこの厳美渓を訪れ、紀行文を記している。国の名勝及び天然記念物に指定され、「日本百景」の一つでもある。天工橋からすぐ上流の左側には厳美公園があり休憩しながら見物できる。

一関駅の北東10数kmにある猊鼻渓は、砂鉄川沿いの渓谷で、岩手県で最初に国の名勝に指定された。東北の耶馬渓と謳われ、船頭が謡う猊鼻追分を堪能しながらの舟下りが楽しめる。

緩やかな猊鼻渓には、ウグイや鯉などたくさんの魚が生息していて、餌も売られている。カルガモもたくさん群がって、魚と一緒に餌をねだっていつまでもついてくる。

猊鼻渓の舟下りも手漕ぎで、往路は発着所から終点の三好ケ丘まで上流へと遡る。往路のはじめに右手にある大岩は鏡明岩という。朝日が水に反射して岩が鏡のように見えるという。通り過ぎて後ろを見返ると左側に見える。

新緑や紅葉など四季折々の景色が眺められるが、次に左手に見える藤岩には、5月下旬〜6月上旬の花期には鮮やかな紫色の藤の房が幾重にも垂れ下がるという。

藤岩の次に左手に現れる岩は、凌雲岩である。その名は、初夏の頃に砂鉄川に立ちこめる川霧によって、雲間から見え隠れする岩のように見えることに由来するという。

次に右手に見えてくる洞窟は、毘沙門窟である。大きな岩の根元にある洞窟には毘沙門天が祀られている。

次に左手に聳えている岩は、壮夫岩である。対岸の少婦岩と合わせて夫婦岩ともいわれる。

壮夫岩の高さは90mもある。