半坪ビオトープの日記

吉祥寺、釈迦堂


ミズバショウは、北海道および本州中部地方以北の山地帯〜亜高山帯の湿原や林下の湿地に群生する多年草で、雪解けとともに香りのよい花を咲かせる。

境内のいたる所に清水が流れ、ミズバショウがたくさん植えられていて瑞々しい。水芭蕉という和名は、葉が芭蕉布の材料にするバショウの葉に似ることによる。

参道の突き当たりに本堂があるのだが、その手前左側に寄棟造茅葺の釈迦堂が建っている。宝泉殿とも呼ばれる釈迦堂は、寛政2年(1790)に天嶺慧鑑和尚によって再建された。

釈迦堂内に祀られている釈迦三尊像の中央正面にある釈迦如来坐像は、像高3尺4寸3分、衲衣(のうい)を通肩につけ、禅定印を結んで蓮華の上に結跏趺坐している。檜の寄木造で、水晶を嵌め込んだ細い眼、卵型の頭部、着衣の太目の襞、硬地漆箔仕上げなどに鎌倉時代後期(南北朝期)の特徴がよく現れていて、県の重文に指定されている。向かって左には獅子に乗った文殊菩薩像、右には白象に乗った普賢菩薩像が配され、どちらの像も江戸期のものである。

釈迦三尊像の左側には、いくつもの仏像が雑然と並べられているが、突き当たりには天嶺慧鑑和尚像が祀られている。当山34世、吉祥寺近くの桂昌寺38世でもあり、本堂と同じく焼失した釈迦堂を寛政2年に再建した和尚である。

釈迦三尊像の右奥に祀られているのは、万源恵詳和尚像である。建長寺185世、当山30世の中興開山和尚で、天正(1573~92)の兵火で焼失した本堂を延宝3年(1675)に再建した和尚でもある。

釈迦堂の右手、本堂の右手前にはミズバショウが咲いている大き目の池がある。

ミズバショウは、山地では5月〜7月に咲くが、ここでは3月下旬から4月下旬に見頃となる。

こちらの鮮やかな黄色の花は、キンポウゲ科リュウキンカ属のエンコウソウ(Caltha palustris var. enkoso)というリュウキンカ(C. p. v. nipponica)の変種で、リュウキンカと同じく山地の湿地に自生する多年草である。「猿猴草」の「猿猴」とはテナガザルのことで、花と長く伸びた茎を南画の手足の長い猿猴に見立てて名がついた。茎が直立する「立金花」と同じく黄色い花弁のように見えるのは萼片である。ここでは4月中旬〜5月中旬に咲く。

本堂右手前の池の中に建つのは、聖観音菩薩像である。新上州観音霊場29番札所となっている。